温かさは溺れた夜の何処か

仕事の無い日は退屈だ。
別に何をするということもないし、部屋で自堕落に横になっていたり酒を飲んでいたりするなんて魂が腐る。
性分じゃない、つまらない。
……と、思っていた時期があった。
今でも休みを待ち望んでいるという訳では決してない。仕事人間、という表現は全く当て嵌まらないと思うものの、暴れている間は気持ちがすっとする。根が戦闘民族なのだから仕方がないのだ。
しかしそんな自分に、仕事の無い日も悪くないと思えることが最近出来たのである。



お互いに放蕩者であることは間違いなかった。出て行ったらなかなか帰って来ない。連絡もそれなり。
顔を合わせる機会を逸し続けてしばらく経つ。そろそろ体温が恋しくなって来る頃だというのに。
それともそう思っているのは自分だけなのだろうか。向こうも多少は寂しく思ってくれれば良いと思う。
「ほんっと、帰って来ないよね」
の恨み節がスカウター越しに聞こえてくる。声を聞くのは3日振りだろうか。何せお互いの取り決めで、遠征に出ている側が連絡を入れることになっているのだ。
作戦の妨げになってはいけないので、留守番側は待機すると決めているのである。
故に遠征に出ている側のバーダックの記憶が間違っていなければ、前回連絡したのは3日前だったので、3日振りということになるのだ。
「何言ってる。お前も人のこと言えねえだろ」
「やだ、何で知ってるの?あたしまだ遠征決まったなんて一言も言ってないのに」
返答にこっそり苦笑する。
恐らくはそうであろうと予想して言った言葉だったのだ。
「……てめぇのことは何でも分かンだよ」
「ははーん、さてはバーダックってばあたしのこと大好きだな?」
「言ってろ、馬鹿」
軽口の応酬が楽しい、なんて口が避けても言えないが、きっと彼女には伝わってしまっている。
スカウターの向こう側の含み笑いの表情まで分かる程には知った仲だ。
なのにここ暫く全く顔を合わせていない理由は、互いに放蕩者だからという単純な話に留まらない。
バーダックと──彼らは互いに一つのチームを率いるリーダー格なのである。
指令が下れば嫌でも星を出ていかざるを得ない。それが如何に手を焼きそうな惑星であったとしても。
例えば現在バーダックが送られた惑星は月が昇らない。大猿になってしまえば3日とかからぬ筈の日程がずるずる5日目に突入していた。そう、3日前に通信を行ったのは、帰るはずの日程に間に合わないことが分かったからなのである。
漸く帰る目処が立ち、連絡を入れてみれば、入れ違いに向こうが惑星ベジータを発つことが分かってしまった……。
今回こそは顔を合わせられるのではと少しだけ期待していただけに落胆も大きい。互いの休みが合わないというのは想像以上に厄介なことなのだと改めて思う。
努めて声には出さないのだが。



仕事の無い日は退屈だ。
それはずっと感じてきたことだったけれど、と付き合うようになって認識が少し変わった。
がいる仕事の無い日」は楽しい。
一日中部屋で自堕落に寝転んで過ごすのも、酒を飲んでいるのも。何をする、ということもなく過ごすことに苦痛を感じなくなった。
が傍にいるだけで退屈ではなくなる。
我ながら単純であると思うものの、本当にそうなのだから仕方がない。
自身に指令がなく、且つ彼女に仕事が無い時は必ず部屋に引っ張り込んでいた。
別に何をするでもなく傍に置いておくだけで満足なのだ。手元に置いておけば誰かに盗られる心配もない。
自らに自信がないと言うわけではないが、とバーダックはそれなりに年が離れている。
彼女は一年程前に成年体になったばかりの、新進気鋭の女リーダーなのだ。故にかなり若いのだが、その実力は目を見張る物がある……らしい。
実はバーダックは実際にそれを目の当たりにしたことはない。何故なら互いにチームを率いるリーダー同士、惑星制圧を同時に行ったことがないからだ。大規模な遠征でもあればその機会も訪れるであろうが、現状その予定は白紙である。
に対してバーダックは妻と死別した子持ちである。我が子でさえ既に成年体になっており独立している。
つまりとバーダックは親子ほど歳が離れていると言うわけだ。見た目が年齢を反映しにくいという種族特性を持っているサイヤ人だが、狭い同族間でそれなりに名の知られたバーダックの歳を知るものからすれば、は歳嵩のいった男を選んだ変わり者に見えていてもおかしくはなかった。
現在『仕事の無い日は退屈だ』というバーダックの感情は『のいない日は退屈だ』というものに取って代わられている。すれ違いの生活が続いており、日々を常につまらないと思いながら過ごしているわけでは無いものの、スカウター越しの声だけではそろそろ寂しさが限界なのだが。
とは言え若い娘に素直に寂しいなどと訴えられるはずもなく、遠征と留守番の立場が入れ替わっているバーダックは通信の入らないスカウターの傍で過ごすことしか出来ないのである。
彼女も独りで過ごしている時はこんな風になるのだろうか。まあ、自分が不在時の彼女の事など分かるはずもないのだが……。
……とか、そんな取り留めもないこと考えていると、スカウターが通信を拾った。
一瞬心臓が跳ねあがる。
に連絡を待ち構えていたと思われたくないバーダックは、たっぷり勿体をつけた後で応答を始める。
「……バーダックだ」
『よう。俺だ、××だ。バーダック、お前休みは退屈だって言ってたろ。暇ならちょっと遊びに来いよ』
いや誰だよじゃねぇのかよ。
と、喉元から出かかったのをぐっと飲み込む。
「来いって何処へだよ」
『帰還船専用倉庫の四番目だ。なるべく早く来いよ』
言うだけ言うとその通信はぶつりと途切れた。好き勝手だな……と思わなくもないが、サイヤ人同士はこんなものである。
無視をしたところでヒビのはいる友情なぞ存在しないし、従う義理もない。
何だったら通信を入れてきた相手の名前に聞き覚えすらない。恐らくはいつかの時に同時に遠征にでも出立したのであろうが……。
更に加えると帰還船専用倉庫に遊びに来いとはどういう意味なのか……。基本的に倉庫で行われることと言えば帰還船からの荷下ろしくらいしかないはずなのだが。
あまり良くない荷下ろしの心当たりにバーダックは逡巡する。
……それでものいない時間の退屈凌ぎにはなるだろうか。
気乗りしなくともぼんやりと連絡を待つのも性分ではないため、ややの後に腰を上げた。
然程遠くない場所であると言うのも後押しした。
帰還船専用倉庫は居住区に程近く建造されているのである。大抵は遠征先で得た荷物を一時的に保管しておくために利用されており、その中には生活用の物資なども多数含まれている。故に居住区に近い方が便利なのだった。
因みに一番目の倉庫が一番居住区に近く、建物としても大きい。頻繁に人の出入りがあり使用状況も目まぐるしい。
そして数字がかさむに連れて居住区から遠くなり、バーダックが呼び出された四番目の倉庫ともなると長期に渡り保管される可能性のあるものや、優先度の低いものの保管場所として当てられるのだ。人の出入りも殆ど無い。
その事実からも何となく不穏な想像がバーダックの頭を過っていった。
それを裏付けるように帰還船専用倉庫の前まで辿り着いたバーダックのスカウターはずっと警告音を発し続けている。
異様に高い戦闘力の数値が一つだけ表示されていた。そしてそれを囲むような数名の戦闘力も。
数値だけでは状況を判断できないが、これは楽しいことが起こる前振りなのかそれとも……。バーダックは無遠慮に倉庫の中へ踏み込むと迷わず戦闘力の集まる方へ足を進めた。
その足音に気付いた同胞が奥の方から飛び出して来る。
「遅ぇぞ。早くこっち来て手伝え」
「はァ……?何手伝わせる気だ」
のろのろと同胞を追いかけると、倉庫の隅で他の同胞たちがやはり何かを取り囲んでいる。スカウター越しに見た戦闘力の通りだ。
そしてその中心には一番戦闘力の高い者が倉庫の隅の壁を背にして立っている。
それは肌の色が浅黒く耳の形がサイヤ人のそれと違っているが、かなりサイヤ人に近い姿をしていて、分類上は亜人種であろう若いメス型の宇宙生物だった。
払い下げられた虜囚であると一目で分かる。
フリーザ軍は働く者には寛容だった。つまりこの中の誰かがそれなりの働きを見せ、慰み者を持ち帰る許可でも得たのだろう。
居住区からやや離れた帰還船専用倉庫を使っている理由も分かる。同胞たちは遠征から帰ってきた直後なのだ。今ここは戦闘の興奮が冷める前の遊びのようなものが始まろうとしている現場なのである。
バーダック自身もこういう行為の仲間に加わったことが無いわけでは決して無い。虜囚となった異種族のメスを嬲った記憶は脳内の隅に確実に存在している。
しかし。
惨状を目の当たりにしたバーダックは踵を返そうとした。
「おい、何処行くんだ」
「俺ァ趣味悪ィ遊びは卒業したんだよ。他当たれ」
「待て待て、こいつ結構しぶとくてよ。戦闘力がどんどん上がってくんだ。気乗りしねえなら壁割ってくれるだけでいいからよォ……。バーダックなら簡単だろ?」
壁?と、女をよく見るとどうやら結界のようなものを自身の前に張ることで自衛をしているらしい。
現状、バーダックであれば確かに容易く破壊出来そうだが……。
「知るか。俺には関係ねぇ」
気乗りしないどころの話ではなかった。
そもそも自己解決も出来ないような虜囚を相手にしようとする事が気に入らない。そしてバーダックには彼らを手伝ってやるほどの義理を持ち合わせていないのだ。
同胞たちの顔ぶれに殆ど覚えはなく、戦闘力を鑑みれば貸しはあっても借りはないことが一目瞭然。
同じサイヤ人同士仲間のよしみで?残念ながらそこまでお人好しにも出来てはいない。
それでも一つだけ引っかかることがあったから、温いと思いつつも口にした。
「……壁がどうのこうのよりもよォ、お前ら、あの女の戦闘力が上がり続けてることの意味分かってんだろ?嬲ってる暇なんてあんのかよ」
少しずつ確実に高くなっていく数値。
その意味が分からない同胞はいないはずなのだ。
案の定彼らは馬鹿にするなとも言いたげに口を開く。
「そんなモン始まっちまえば集中してられるわけねぇだろ。だからよォ……」
「ふぅん……そーかよ。忠告はしたぜ。後はお前らだけでよろしくやってろ」
話を途中で遮って、やはりバーダックは踵を返した。
真後ろではバーダックの後頭部に向かって罵倒と懇願の両方が投げられてくるが無視して外に向かう。どちらも負け犬の遠吠えと同じようなものだ。
バーダックが倉庫を出ていく瞬間にも、スカウターに表示された女の戦闘力は上昇を続けている。
バーダックが来るまでにも結界を破壊しようとしていたのなら、結界越しに殴りかかってくるサイヤ人を目の当たりにしてさえその戦闘力は上がり続けていたことになる。よしんばそんな女を組み伏せたとして、本当に戦闘力の上昇は止まったのだろうか。
女に対してその戦闘力の上昇は脅しのつもりか?とも、本気なのか?とも、問いはしない。
少なくともそれがバーダックにとって同胞を裏切ることなく女を後押しできる最大の譲歩であったからだ。
別に絆されたわけでもなかったが、ただ一つバーダックも第一線で戦っているはずの女戦士を待っているという事実がそうさせた。
もし彼女が同じ目に遭い、そして同じ手段を使うことがあったなら……。そう考えると僅かな憐憫を禁じえなかったのだ。
倉庫を後にしたバーダックが居住区に戻ろうと空中へ飛び上がった時、スカウターの数値は遂に計測不能域にまで達した。
瞬間、真後ろで物凄い爆発が起こる。
耳が痛くなるくらいの破裂音と爆風がバーダックの髪を乱暴に散らし、熱風が背中を強く押した。
やはり、と思わずにはいられない。
不相応なほどに上がり続ける戦闘力を感知したらまず自爆を疑う。脅すための演出の可能性が高くとも。
流石に敵に包囲された状態で脅すための演出では済まなくなってしまったようだが。結界内で自爆したにしては爆発の規模が大きい。恐らくは直前で結界を解いたのであろう。バーダックが本気かと問えば女は頷いていたかもしれない……。
どちらにせよもう爆発は起こってしまい取り返すことは出来ないのだ。スカウターからは女の反応は勿論のこと同胞たちの反応もなくなってしまっていた。
死んでいるということはないと思うが、忠告はしたのだし、それに従わない選択をしたのならどうとでもなっていればいい。ついでに女の方は絶望的だろう。爆心地にいたのだから。
嗚呼、後味の悪い出来事に首を突っ込んでしまった。
自身にそんなつもりはなかったが、性分でなかろうと大人しくを待っていれば良かった。



その日の真夜中。部屋に自分以外の存在が忍び込んで来た気配で目が覚めた。
が、すぐに警戒を解く。
匂いで分かる。焦がれてやまなかったこの匂い。間違えるはずがない。が帰って来たのだ。
連絡も寄越さず自由なことだと思いつつ、静かに呼吸を繰り返して挙動を伺っていると、やがて控えめに寝台が沈み込んだのが感ぜられた。同時に淡い石鹸の香りが濃くなる。
「……何だ、風呂、入っちまったのかよ」
「やっぱり起きた。当たり前でしょ、汗も返り血もそのままでこんなところに入れるわけないじゃない」
「てめぇの匂いが薄くなるだろ?興醒めだ」
と、言いつつも逸る気持ちを抑えきれずにを抱き寄せる。鼻先を近付けると仄かに彼女の匂いが立ち上っていてぶわりと愛しい気分がこみ上げてきた。
抱き寄せた肩の感触で分かる。触れるのは滑らかな肌だけで、どうやらの上半身は裸であるらしい。思わず腰がぞわりとした。
「興醒め?嘘ばっかり。ホントは寂しくて仕方なかったくせに」
「ナメんな。そりゃお前のことだろうが」
軽口を叩き合いながら顔を近づけ合う。
どちらからでもなく唇が重なった。
「んっ……んん……っ、んふぅ、っ……ぷは、っ……」
唾液を舌先でかき混ぜ、夢中で舌をしゃぶり合った。何度も角度を変えながら、零れ落ちるのも構わずに味わって確認する。
──ちゅぐっ、ぢゅ、っ……くちゅ、……れろ、……
暫く部屋には互いの唇を貪り合う音しか存在しないほどで。
離れるのが惜しく追い縋っていたら、苦しげな彼女に胸板を押された。
そこで漸くバーダックも唇を離す。
「は……疲れてンなら明日でも良いんだぜ。一晩くらい我慢してやらァ」
「んン……?や、……実はバーダックが寝てたら起こそうと思ってたんだよねぇ。あたし、もうお預け無理かも……」
目の前ではにかむは、よく見ると目尻を赤く染め、頬を紅潮させている。
蕩けた視線は発情を隠そうとしていない。
「スケベ女」
「お互い様でしょ」
の膝がバーダックの股間をぐ、っと押す。服越しでも分かるほどに膨らんでいるその部分を。
の匂いを感じたときから勃起は収まる気配がない。先は自分でもよくぞ『我慢する』などと宣ったな、と思うほどには。
「それに、早くバーダックのところに帰って来たくて、すっごい真面目に仕事してきたんだよ。ご褒美があってもいいじゃない?」
それは果たしてどちらへのご褒美の事を言っているのだろう。バーダックにとってもご褒美でしかないと言うのに。
思わず彼女の体を掻き抱く。早く帰って来たかった、なんて可愛いことを言うからだ。
「ん……はぁ……バーダック、温かい……」
うっとりとした声が耳をくすぐる。
早くも獣になりそうな自分を押さえ込みながら、の首筋に顔を埋めた。
そのまま、自身よりもずっと線の細い輪郭を唇で辿る。
「あん、……くすぐったい、よォ……」
「それだけじゃねえだろ?」
身じろぎする態度は間違いなくが性感を享受している証。バーダックの腕を遠慮がちに掴む手に力が籠もってくる。
そういうのを感じると堪らない気持ちになるのだ。
「いたっ……!」
こみ上げてくる衝動を隠そうともせず歯を立てると、非難交じりの悲鳴が上がる。構うものか。可愛くて愛しくて食べてしまいたいほどなのに。
「もォ……すぐ噛む……」
「美味そうで堪らねぇんだよ」
今しがた残したばかりの歯形を舌でなぞると、の肩がぴくりと震える。仕事が終わったばかりで感覚が鋭敏なままなのだろう。
反応を試してみたくてぢゅっと音を立てて肌を吸った。途端、白い肌には簡単に唇の痕が残る。
「ぁあ……っ、見えるとこにつけたら……また皆に揶揄われちゃうじゃない……」
「無視して俺とヤりまくってるって宣伝しとけ。そうすりゃ誰も手出ししねぇ」
垣間見せる独占欲を含んだ言葉にの体の奥は甘い切なさを帯びる。なのに気付きもしないバーダックは肩口にちゅっとキスをすると無遠慮に胸を掴むのだった。
掌から伝わる柔らかさに腰の落ち着かなさを感じながらやんわりと揉みしだく。
「んァ……ッ……、ああぁ……」
可愛い嬌声が零れ落ちてくる。
堪らなくなって片方の乳房に乱暴にかぶりついた。舌先に触れるぷっくりと膨らんだ感触をねろねろと捏ね回してやる。
「んんんッ……!あ、あぁっ!あァァ……、やぁ、きもちィ……ッ。はぁ、ん……っ、そこ、ォ……っ」
ちゅくちゅくと音を立ててたっぷり可愛がる。
すると体の下でがのたうち、腰と腰が密着するのだ。勃ちっぱなしの男性器に腰を押し付けられると、淡い快感を拾ってしまいぞくりとする。
すぐにでも秘密の部分を暴いて、傍若無人に犯してやりたい衝動にさえ駆られた。実行に移したとしてもはきっと受け入れてくれるだろう。それどころかいやらしく乱れて見せてくれるかもしれない。
衝動に従うように、バーダックはの太股をゆったりと撫でた。
「あ、ん……くすぐったい……」
そう言いつつも、期待するように少しだけ足を開いて先を促す
乳首を弄びながらも、誘われるままにバーダックは下着の上から際どい部分に指先を触れさせる。
「こんなに濡らしやがって……。どんだけ期待してンだ」
「はうっ、……あぁ……やだ、恥ずかし……」
じっとり熱く湿った感触。
ちょっと触れただけでもの愛液が指先に纏わりついて来るのが分かる。
ねっとりとしたぬかるみの感触に、更に下腹部が熱を持ったような気がした。もうこのまま犯してしまおうかとも。
この熱い粘膜の奥に受け入れられる瞬間を想像するだけで腰が震える。
愛しいの体内がバーダックをきつく包み込んで、言葉に出来ない程の快感を与えてくれるに違いないのだ。嗚呼、ぞくぞくする……。
「ふあぁっ、強いぃ……っ、も、もうちょっと、優しく……」
想像だけで堪らなくなり、思わず乳房にまで歯を立ててしまった。体を捩るにはっとして口を離したが、ここにも歯形を残してしまったようだ。
「乱暴なんだから……。そういうとこ、好きだけど……」
嗚呼、いちいち可愛いことを言う。
多少の罪悪感を抱えつつ、歯形の痕を労るように舌を這わせた。すると、またしどけなく体を投げ出して艶かしく体を波打たせる。
続けざまバーダックは、下着の隙間からぬかるみの中に指先を滑り込ませ、溝を軽く上下に探ってみた。
「はー……はー……っ、ああ、指……っ、んんっ……」
気持ち良さそうにふるりと腰を震わせて、僅かに浮かせようとする。
無意識に感じる部分を擦り付けようとしているのだと気付き、バーダックはごくりと喉を鳴らした。望みならば叶えてやろうではないか。興奮を煽られながらの柔らかな溝を慎重に押し開く。
そしてちゅちゅ、と乳首を吸い上げると同時に敏感な突起にぬるりと指先を擦り付けた。
「はぁ、っ!だめえ、…ッあぁぁ、胸、吸いながら、そこ触っちゃ……っ、あっあっあっ!」
細い腰が嬌声を伴い跳ね上がる。
軽い絶頂を覚えたことは目に見えて明らかで、バーダックは自身の気分が深く充足していくのを感じた。
内側から滲む愛液に塗れた指先を舐め取っての顔を覗き込む。蕩けた表情を見せて欲しかった。この瞬間、バーダックにしか見れないが欲しくて堪らなかった。
「はぁ、っ……なぁに……?」
「……いつもより断然早ェな」
「だってぇ……久しぶりだから仕方ないじゃない……。ねぇ、あんまり焦らしちゃ嫌……」
息を乱したは縋るようにバーダックの首に腕を回し、そっと体を寄せてくる。それだけに飽き足らず、バーダックの耳をやんわりと唇で食み、舌で輪郭をなぞり始めた。
「ぅ、っ……おい、馬鹿……変なことは、止せ……ッ」
「ん……ふふ、バーダックにもいっぱい感じて欲しいんだもん……」
首に回された腕はそのまま肩を滑り落ち、そっと胸板を撫でまわす。妖しく触れてくる掌の感触に呼吸が浅くなるのを感じた。それでも努めて声は出さない。
その間にもの舌先は耳を離れ頬の傷跡をなぞっていく。
丁寧に何度も往復を繰り返しながら。
「はァ……、気は、済んだか……?」
「……意地悪。素直に気持ち良いって言えばいいのに……」
バーダックの反応に不満げな
それなら……と胸板を撫で回す細い指先がつい、とバーダックの乳首に触れた。
「うぁ……ッ!」
瞬間、思わず声が出てしまい全身総毛立つような気がした。いや実際に尻尾は鋭敏に反応し、思い切り毛羽立ってしまったのだが。
「あは……、尻尾ふっかふか……。感じちゃった……?」
「ッ、るせぇ……!変なところ触りやがって……!!」
「あれ?嫌だった……?じゃあこっち……」
指先はしなやかな動作でバーダックの腹筋をなぞり、痛いほど膨らんだ男性器を服の上から握り込む。
「すごく大きい……バーダックこそ、期待してるじゃないの……」
ねぇ?と妖艶に微笑んでそのまま手を上下させる。衣擦れがややもどかしいが、がこんな部分に触れていると思うだけで更に昂ぶってしまう自分を自覚した。
もっとしてくれと思う反面、巧みに導かれてしまうのはバーダックの本意ではない。
「は、ァ……おい、このまま、終わらせるつもりじゃ、ねぇよな……?」
興奮と快感で途切れ途切れに問えば、は自ら下穿きを下ろすような仕草をして見せる。
「そんな勿体無いことしないよォ。……じゃあ、シよ……?」
このお誘いを蹴る理由はどこにも無いだろう。体を寄せていたを荒々しく寝台に押し付けのしかかる。
「きゃっ……!……あぁん、乱暴……。そういうの大好き……」
「……ハッ、このドスケベ女」
下着を力任せに引き下ろして、掴んだ足の間に体を捩じ込ませると、取り出した男性器の先端を割れ目に擦り付けた。
「ぁあん……っ、にゅるにゅるきもちぃ……バーダックの、熱い……」
それはこちらの台詞だと思う。
愛液でぬかるみ、じっとり熱を帯びてバーダックを迎えようとしているの粘膜は、触れたところから溶かされそうだ。
高揚に腰が疼く。
「いくぜ……力抜けよな」
無意識に下唇を舐めて、ぐぶ、とのナカに侵入を果たした。
が久し振りならバーダックだって久し振りなのである。
埋め込んだ瞬間の気持ち良さに思わず眉を顰めてしまった。ぐっと唇を引き結び、情けない声が漏れそうなのを堪えてずぶずぶと開いていく。内側が狭い。ぬめった内側が求めるように吸い付いてきて、腰から猛烈な快感が背筋を這い上がってきた。
「あ、っ……あっ……、は、ぁ、ああ……」
腰を使ってやや強引に先に進むと、は気持ち良さそうな喘ぎ声を断続的にあげる。
「ッ、く、ぅ……っ、はぁ……はぁ……っ」
喘がされるのはオスのプライドが許さなかったが、バーダックも声をあげたい気分だった。
ずっとこの瞬間を待っていたのだ。愛しくて愛しいと繋がる瞬間を。全てを許され求められる一瞬を。
言い知れない気分で彼女の最奥にぐっと深く突き込んだ。
「んん、っ、ああ……凄いよォ……これ、欲しくて堪らなかったの……っ!思い切りシて……」
「……滅多なこと言うんじゃねぇ……、後悔すンぞ……」
2度、3度と深く突き立てながらを伺う。
すると、体の下で身をくねらせながらこんな事を言うのだ。
「あう、っ!後、悔……なんて、しないよぉ……っ、バーダックなら何でも良い……!全部、許してあげる……!」
再び尻尾が毛羽立った。抑えきれない興奮や感情が尻尾に出てしまう。
知られたくなくての手に指を絡めて押し付けた。そしてそのまま乱暴に腰を振る。
「あぁっ……!あっあっ、はぁっ……、やぁっ……奥っ……感じちゃうよぉ」
「キッツ、……は、っ……ココだろ、っ?なあ、コレ、スキだろ……っ?」
特に敏感に反応する部分を狙って突き上げると、声にならない声を上げて仰け反るのだ。
突き出されて揺れる胸が相当にいやらしい。誘っているとしか思えない。
堪らなくなって小さな唇にかぶり付いた。嗚呼可愛い。食べてしまいたい。
ちゅう、と吸うと、催促されていると思ったのかおずおずと舌先を差し出された。自ら食われに来る殊勝さがまた堪らず、絡め取って優しくしゃぶる。
「んふ、っ、んんう、んっんっ……!」
の味はいつ味わっても甘やかでクセになる。舌先を擦り合って掻き混ぜた唾液を垂下しながら、バーダックは拘束していた手を解放する。そして背中を抱き上げ体を密着させると更に腰つきを早めた。
「あんっ!あんっ!ああぁぁあ……きもちぃい……はあ、ぁっ、激し……っ」
縋るものを求めて肩を掴んだが爪を立てる。先程見えるところに痕をつけたら……と、言っていたの言葉を思い出した。
こんなところに爪立てたら、バーダックにもとの愛の行為の痕が皆に見えるような形で残ってしまうだろう。
バーダックにとってそれは好都合だ。はバーダックというオスしか選ばないと言うことを周りも思い知れば良い。
「あぁ、ッ、はぁ……はぁ……、、っ……」
思わず名前を呼ぶと、彼女は困ったような表情でバーダックを見上げた。
「あたし、も……う、っ……イっちゃう……。おなかのナカ、くるしいのぉ……っ」
それは分かっている。
の体内は突き立てる度に苦しいほどバーダックを締め付け苛んでいた。
その瞬間が近いのだなと体で分かる。
「いつでも、良いぜ、……俺も、そろそろ……ッ」
込み上げてくる衝動を抑え込むのが難しくなっていた。
早くのナカを満たしてしまいたい。受け入れられたい。その柔らかな内側の奥の奥。自身だけが許された場所で。
の足を持ち上げ、より深く繋がろうと彼女の腰を掴んで体をぶつけた。
ぐずぐずに蕩けた結合部分からは粘液が混じって溢れている。そしてその奥は、脈動にあわせて収縮を繰り返す。
「ああっ!あっ、あっ!やぁんっ、それ、深いィ……っ、あ、あ、イっ、ちゃう、イくぅ……っ」
「う、ッ……は……あぁ、すっげぇ……気持ちイィ……。好きにイっちまえ……」
ぞぞぞ、と背筋に走る快感がバーダックの背中を押す。バーダック自身も限界が近い。戦慄くの体内がバーダックを搾り取ろうと震えるのだ。
目も眩む快感の波に衝き動かされるまま、バーダックはの最奥を深く貫いた。
「ああっ、だめ、イくイくっ!バーダック、バーダック……っ!!」
名を呼び縋り付くの爪先がぴんと張り詰めた。
その瞬間、掴んだ腰ががくがくと震える。
「あはあぁぁ……っ!!」
「お、ォ、……ッ、あー……出る、ッ、出る……!」
跳ねるの腰を押さえつけ、ギリギリまで突き込んだ場所でバーダックも本懐を遂げた。びゅくびゅくと放たれる体液は一度では収まらず、脈動を繰り返して断続的にの中に注ぎ込まれていく。
「はー……出てる、止まんね……」
ぐっぐっと腰を押し込んでは繰り返される射精を、はうっとりと受け入れた。
中から溢れ返り、内股を伝う感触に目を細める。
「はぁ……、二人に弟妹でも作ってあげようとしてるの……?」
既に独立を果たしている二人の息子を示唆され、バーダックは視線をに向けた。
殆ど年の変わらぬ(上の息子に至っては年下の)義母が出来ようかという相手がいることを知った瞬間の反応を思い出したからだ。
漸く体を離し、の隣に体を投げ出して寝そべる。
「あいつらの為には作らねえぞ」
「じゃああたしの為?」
全てを受け止めたが寝そべったバーダックにぴたりと寄り添い身を寄せた。
その肩を抱き寄せ返答を探す。
が欲しいと言うのなら悪い気は全くしない。の為にバーダックが遺せる数少ないものの1つが血脈なのなら、喜んでそうするつもりだ。
「……あたし、もう少しバーダックに独り占めされていたいなあ」
「……はァ?」
「子供がいたらあたしもバーダックも、愛情が分散するでしょ?まだ二人でこうしていたいの」
少し照れたように胸板をなぞる指先がいじらしい。
「好きにすりゃァいいだろ。それに簡単に生まれねえから俺達は数が少ねえんだしよ」
民族特性なのかサイヤ人はさほど数が多くない。子を望まないメスも多いからなのだろう。はそういう意味で望まない訳ではなさそうなので、いずれは……という予感もなくなはいのだが。
眠くなってきたのか、ふあ、と小さく欠伸をしたはそう言えば……と話を続ける。
「話は変わるんだけど、昼間、帰還船専用の着陸場すごい騒ぎだったんだってね」
「……ふーん?」
腕の中の温もりに微かな微睡みを誘発されながらバーダックは生返事を返した。
「何か捕虜が逃げたとか何とか」
続いた言葉にバーダックは漸く昼間のやり取りを思い出し、視線だけをに向け先を促す。
「倉庫内で凄く大きな爆発があったらしいよ。中にいた人たちは皆メディカルマシン行きだったんだって。それに……」
「それに?」
「ポッドの盗難もあったみたいだし、捕虜の運び出しに不備でもあったのかな?」
ポッドが盗難されたということは、あの爆発を起こしたと思しき張本人は宇宙へ逃げ出したのか。
爆発の中心部にいた筈だと思い込んで放置したが、自分自身を巻き込まない方法を使ったのだろう。
宇宙は広い。不思議な力を持つ生き物は数え切れないほど存在している。生き延びたあれはいつか故郷の仇討ちの為に惑星ベジータを訪れるかもしれない。そうなってしまえばもう敵だ。バーダックも容赦なく迎え討つことになるだろう。
だが、先の事をああだこうだと愁いても仕方がない。バーダック的結論はこの一言に尽きる。
「さぁなァ。俺たちには関係ねぇ話だ」
そしてを改めて抱き寄せて、髪に鼻先を押し付けた。
すう、との髪の香りを吸い込む。嗚呼堪らない。
この温もりに溺れて窒息してしまいそうだ。
バーダックが一人、淡い眩暈を味わっていると、が腕の中で身じろいだ。彼女も睡魔に誘われているのだろう、細めた目がとろんとしている。
最中もこんな感じだったな……とふしだらな思考が頭をもたげるが、はそんなことに気付くはずもなく、そっとバーダックの頬に唇を押し付けた。
「眠くなってきちゃった……お休み、バーダック。愛してる」
「……俺も、……愛してるぜ……」
耳元で彼女にだけ届くように囁くと、は微笑んで身を寄せ目を伏せる。嗚呼、どうしようもなく温かい。幸せだ。
微睡みの中、夜の迷子たちはこうやって存在を確認し合うのだろう。
愛に溺れた二人きりの安寧が、真夜中の終着地なのだと。