次世代の遺伝子

寄る辺というものがあって初めて根付くのだと思う。
その根付きが無ければ、花もつけず収穫などもないだろう。次代の芽など望むべくもない。
いや、そもそももう絶滅しようとしている種に次代などという言葉を使うのもおこがましいのかも知れなかった。
生存純粋種数五人、たったの五人。うち一人は行動を共にしてすらいない。
現状確認出来る種としての個体数がたったの五人。内訳はオス個体が四でメス個体が一。
どう贔屓目に見ても殖えるためにはバランスが悪すぎる。
つまりこの種はもう絶滅が不可避であると確定している種なのである。
生き残りの中には惑星ベジータを支配していた王の系譜も含まれてはいるものの、純粋種を何人か産んだところでたかが知れている。
それを本能的に理解しているのかそれとも単に興味がないのか、惑星ベジータの生き残りたちは特に塒(ねぐら)を決めることもなく、浮雲のような生活を続けているのだった。



全て事が済んだ後、砂浜から臨むのは青い海だった。
大気の組成は多少母星とは違うものの、海は同じに青いのだなと思った。
しかし爪先を少し浸してみて溜め息が出た。ぬるりとしていて皮膚に触れると僅かに痒みを帯びるのである。
自身にとっては有毒な成分を含む海だった。がっかりだ。
この惑星は昼夜の感覚が非常に長いらしかった。降り立ってから暫く経つがいつも淡い日光と思しき恒星の光が地表を照らしている。
飽くまで制圧に降りただけなので、詳しい天体の事情などは分からないが、いつまで経っても夜が来ない。日光に照らされ続けているこの惑星は、降り立った時に比べてじりじりと気温を上げ始めていてとても暑くなっていた。
海があるのならその冷たい感覚に身を投じたくなるほどには。
「折角何にもなくなったのに……」
「おい、何をしている」
「あ、ベジータ……。ここ、毒の海だよ。泳ごうと思ったのになあ」
既に戦闘服を脱ぎ捨てて、何なら下に着ているぴったりとしたスーツまで脱ぎ去って。下着姿で尻尾も垂れ下がったままのにベジータは顔を顰める。
「大概にしろ。貴様命が惜しくないのか。ふざけた真似ばかりするのなら殺したって良いんだぞ」
「良いじゃない、すごく暑いんだし。もう誰もいないんだよ?裸で泳いだって誰か気にするって言うの」
言いながら薄いノースリーブの下着の裾についと指先を差し入れて、引き上げるような素振りをして見せた。
隠れていた肌が、淡い光を反射して白く映える。
「それともベジータが気にしてくれるの……?」
薄ら笑いを浮かべながら下着の裾を更に捲り上げていく。
際どいラインまで引き上げて、試すようにベジータの顔を見たら、直ぐに視線を外されてしまった。
逸した顔の眉間には不愉快そうに皺が刻まれている。
「つまらんことを……。下衆な冗談はそれくらいにしろ」
「本気だよ?」
「全く笑えん」
王の系譜として血族を繋ぐ筈の第一王子としては非常に潔癖な台詞であると言わざるを得ない。
寧ろ彼が一番最初にを娶ると宣言せねばならないと思うのだが。
生憎と戦闘狂としての生まれは、繁殖よりも争い事を好むらしい。絶滅危惧種のくせに死期を早めたがることのなんたる皮肉。
勿論、彼は自分が選ばれた側の生き物であると信じてやまないので、死期を早めているつもりなど毛頭ない。タチが悪い。
海水浴を一蹴されてしまったは、仕方なく戦闘服を拾い上げた。
滅んだ母星の海もここの海のように青く透き通っていたのを覚えている。遠征の合間に良く泳ぎに出かけた。
友人とも、独りでも。
まだその頃はベジータと一緒に行動するなんて夢にも思っていなかった。
何故ならは下級の出身であったからだ。下級戦士の中にはラディッツのように見出されて、王族と行動を共にしたりするものもいる。少ないながらも。しかしは残念ながら平凡中の平凡だった。
可もなく不可もなく。
特筆して良いところもないが、戦えないわけでもないという中庸の成績。
つまり、王子の側近のように行動を共にすることなど普通なら絶対に叶わないのである。
ラディッツはラディッツで苦労したようだが(何せ周りは殆ど自分よりも戦闘力が上の存在ばかりなのだ)、そんなラディッツよりも更に格下の存在がなのだ。
惑星ベジータと共に殆どの同胞が死滅していなければ今でもは気ままな遠征暮らしを続けていたのだろう。
当初は何故生き残ってしまったのか……と辛く感じることもあったが、最近ではすっかり慣れた。戦闘民族として生まれた脳は適応力が高いのかもしれない。
さて、戦闘服を元どおりに着込み、項垂れていた尻尾を腰に巻き付ければ準備は完了だ。
とはいえ、既にこの惑星で行うこともなくなっており、一体何の準備をしたのかと問われれば返事に困るのだが。
「ベジータとだと予定より早く終わるから楽で良いね」
「本当は俺とナッパが一人で出て、ラディッツとお前を組ませるのが最も効率が良いんだがな」
「あはは、効率ばっかり求めなくても暮らしに困ってないじゃん。それに、ラディッツとナッパはあたしに王族の純粋種を産んでほしいみたいだし……?」
へらへら笑いながらまたしても試すようなことを言い出したに向かってベジータは露骨に舌打ちをした。
の言う通り生活には何ら困っていない。
フリーザの支配下と言うのは全く気に入らないが、飢えもなければ有り余る戦闘衝動を我慢する必要もない。そもそも遠征中は殆ど監視の目もなく、自由である。(とはいえスカウターで会話を聞かれてはいるが……)
効率化を考えてしまうのは性分なのであろう。
それよりもその先の台詞が全く以て気に入らない。下級戦士との子供など……いや、そもそもメスと番うことを嫌っているのだ。
成年体になって以降、そういう衝動が無いわけではない。が、それと子作りは全く別物であると考える。
自身が我が子に何かしらの愛着のようなものを見出すことは無かろうが、万に一つ弱点となるようなことになっては困る。
現状、気軽に子を持つなど愚かしい。ベジータの血を分けるのだから次代の種になる可能性も勿論あるが、という下級戦士の血も混じる。妊娠期間での戦力を暫く削った上、生まれてきた子供が役にも立たぬ凡才であったなら、その期間を無駄と言わずして何と言おう。
優れた遺伝子が発現するとは限らない以上、枷を増やす必要も無い。
「あいつらが勝手に言っているだけだろう。現状で子なんぞ邪魔でしかない」
「現状でってことは、将来的にはアリってこと?」
「さあな」
が食い下がれば、明言をしないベジータが背中を向けて歩き出す。もう、会話はしないという意思の表れなのだろう。恐らくその後ろ姿に声を掛けても返答はない筈だ。
だけど。
「ねえ、ベジータ、待ってよ」
それでも声を掛けながら追いかけた。
やはり返答はない。



海辺は見通しが良く、太陽光も十分に注がれていたが、二人が塒にしているのは森の中の巨大な樹洞だった。
日当たりが良すぎると暑いし、なかなか夜が来ない惑星なので寝る時は薄暗い樹洞の方が都合が良かったからだ。
帰還の予定日までは少しだけ日数が余っている。既にスカウターに人的生命反応はなく、この惑星で二人きりには違いないがベジータには一つ気掛かりがあった。塒をこの森の中の巨木の樹洞にしたのは偶然だが、気掛かりの理由はこの塒の位置にある。
この惑星はそれなりに科学技術も発展させた文明人たちにより運営されていた。それをこの数日で根こそぎ滅ぼしてしまった訳だが、そんな文明人たちは不思議なことに惑星の北半球に集まっており、南半球の、特に最南には生命反応が殆ど存在しなかったのである。
惑星によっては地軸の傾きや自転の速さ、周辺恒星による温度変化で北極地点や南極地点に生命反応が無くとも不思議ではないことも多い。特にこの惑星は長すぎる昼夜のせいで気温の差が極端に激しい。極地点は過酷な環境が予想され、生命反応が無いことは然程問題ではない。
しかし、それは極地点に限っての話である。
この惑星の陸地は北半球に広大な大陸と、大小様々な島々、南半球にその三分の一程の小大陸と一つの大きな島から成る諸島だけで、後は全て海で形成されていた。惑星の90%程度が海で覆われた惑星なのである。海には文明を持たない海洋生物が確認されたが、惑星の支配者たる原住民は陸上生物だった。故にベジータとは陸上に住まう文明人たちを絶やすことで今回の仕事を終わらせたのだ。
この惑星は陸地で生活する種族にとっては狭すぎると言っても過言ではない。海の面積が大きいために、地表が熱された際の雨の規模も大きく、地表の温度をある程度生物が生きられるよう保っているようだが、原住民たちにはさぞかし窮屈な惑星と言えただろう。にも関わらず、南側の小大陸には人的生命反応が一つもなかったのである。
勿論、スカウターも全ての生命反応を拾うわけではない。小動物の中でも小型の生物となれば拾いきれない反応もたくさんある。しかしその理由ではこの小大陸に生命反応が極端に少ないことの裏付けにはならない。
当初は原住民の文明レベルが渡航に追いついていないのかとも思ったが、破壊した建物や生活文化を見る限りではそうでもないらしい。長すぎる昼夜の温度差を解消するためか、建物は効率よく日光を遮りつつ一定温度の保温がなされるような不思議な設計がされていたし、言語文化は統一されて基本的な意思疎通は世界共通で可能らしかった。狭い陸地内をギリギリまで有効活用し、生活基盤を整えていた節も垣間見えた。
つまり陸地は広ければ広いほど良かったはずで、南の小大陸に生命反応がないと言うのは異常なのである。
その事実から察するに恐らく原住民達は、何かを嫌って南半球の小大陸を生活圏内にしなかったのだ。
実は、この二人が塒にしている樹洞はその南半球の小大陸の最北端にあった。当初は深く考えず、生命反応が少ないところに拠点を構えた方が襲撃しやすく反撃されにくいだろうと思ってのことだったが、制圧が進むにつれて陸上生命体が多い割に自分たちが塒にしている場所に原住民たちが生活していないことが気になり始めた。
何かあるのだろうと思いつつ、警戒しながら就寝したりもした。しかし気楽なのすやすやとした寝息が聞こえるだけで今日まで一切何も起こらなかったのだが……。
「おい。最後に森の中を確認するぞ」
「森?何で?何の反応もないよ?」
「馬鹿が。反応がないから確認するんだ。黙ってついて来い」
疑問を素直に口にしたら馬鹿にされた。ベジータはいつでも一言多いと思う。同じような対応をしたら怒るくせに……とは思うものの、生まれが違うのだから仕方がないか。彼は血筋によって理不尽を振り翳しても許される立場にある。覆らない溝というものは存外何処にでもあるものなのだと諦めるより他にはない。
生命反応が無い森の中は今日の今日まで殆ど未探索だった。何だったらベジータが探索すると言い出したのも意外でしかない。生命反応も無い土地の何が気になるというのだろう。
踏み込むほどに鬱蒼とした景色が続く。
草木を踏み敷く二人の足音だけが妙に耳障りで、それ以外何の音もしなかった。ベジータに言われたとおりにが一言も発さないからであろうが、それにしても何だか奇妙な気分になってくる。
「……」
「……」
「……ねぇ、ベジータ」
「何だ」
「この森……あたし達の足音しかしないね」
「そうだな」
「……時々小さな虫は出てくるけど……鳥の声とか動物の気配が殆ど無い気がするんだけど……」
「それが気のせいだと思っているならお前は例えようのない大馬鹿だ」
口調は乱暴だがベジータはの言葉を肯定した。
と同じように鳥や動物の類がこの森の中に殆ど生息していないことを感じ取っていたのである。温室のように囲われているわけでもないのに、どうやってこの小大陸は生命体の侵入を拒絶しているのだろう。
原住民を根絶やしにしてしまった今、その疑問に答えてくれる者はいない。よって、現状のように森の中を探索せねばならないということなのだろう……と納得のいく理由を見つけ、そのまま黙ってベジータの背中を追うこと暫し、ふとは空中を仰いだ。
「ベジータ、何か……すごく美味しそうな匂いがする」
に告げられベジータも空中を仰ぐ。
「……美味そうな匂いだと?……俺は特に何も感じないが」
「するじゃない。甘酸っぱい……果物みたいな匂い……。こっちから……、ほら、来てよ」
サイヤ人は他民族に比べて五感が鋭い種族である。故に空中に漂う微かな香りもはっきりと嗅ぎ取ることが出来る。ベジータを追い抜き、は香りのする方へずんずん足を進めていった。
「おい、待て。馬鹿が勝手に動き回るな!」
ベジータの制止の声も無視して、生い茂った草を掻き分ける。生命反応がないだけに、整備もされていない森の中はあちこちに草が伸び放題で歩きにくかったが、確実に匂いは強くなっていた。
景色の変わらぬ森の中をただ歩かされるのも何となく飽きていたは、確実に何か発見があるという思いで足取りが軽くなる。
「ほら、分かるでしょ?凄く良い匂い」
「俺は何も感じないと言っている!」
「何言ってるの、この辺一帯その匂いしかないよ?何だろう、果物でもある──……ッ!!」
あるのかな、と続けようとしたが、その言葉は発する前に喉の奥で潰れて消えた。
突如ベジータの視界からもの姿が一瞬にしてなくなる。
「おい、ッ!!」
勿論彼女が忽然と消えてしまったわけではない。
草が生い茂っていてすぐには分からなかったが、どうやら広範囲に渡って地面が陥没しており、そこへ落下したらしい。ベジータが駆け寄って覗き込むと、1メートル程の段差の下、べったりと粘つく泥のようなものに腰まで沈み呆然とするが目に入った。
「……びびびびっっっくりしたぁ……」
「……無事か。……この間抜け。何故すぐに空中に飛ばなかった」
「だ、だって森の中で急に足元がなくなるなんて思わないじゃないの……うっわ、やだもう……戦闘服の中までどろどろ……」
「だから馬鹿が勝手に動き回るなと言ったんだ。早く出て来い」
「ちょ、待って……何か、凄く、この泥……深いのかな。足がつかない……」
粘性が高いのか一気に沈むことはないが、立ち上がるために足を伸ばそうとすると沈んでしまい踏ん張りが効かない。それどころか戦闘服やブーツの隙間からじわりと入り込んでくるぬめった液体の感覚が重くなっていく。高重力を持つ惑星ベジータの生まれであるサイヤ人には多少の重量など問題にならない。この惑星も重力で言うなら軽すぎるほどだ。しかし、足が底につかないのでは体は沈む一方である。手を突いたとしてもその手が埋まるだけで体が上がらないのだ。
とはいえは空中をも自由に駆け回ることの出来るサイヤ人。体を浮き上がらせれば脱出できるはずなのに上手くいかない。纏わりつく粘液が体の自由を奪いつつ体ごと飲み込もうとしているようで、流石には背中に冷たい汗が流れるのを感じた。
すると。
「……もういい。引き上げてやるから手を出せ」
「え?でも結構どろどろで……」
「頭まで泥に浸かりたいのならそのままでも構わんぞ」
「……」
突き放した言い方ではあるが助けてくれる気概はあるらしい。は遠慮がちに手を差し伸べた。
ぐ、っとベジータの手がの手を力強く掴む。他人との触れ合いに対して潔癖なきらいのある王子様は、こんなことでもない限り手を握ることすらしてくれない。密かにの心臓が跳ねる。
しかし彼女が一人どぎまぎしていることも知らず、ベジータは掴んだ手を思い切り自分の方に引っ張った。体を浸している重たい粘液の抵抗を一瞬体に感じたが、引っ張られるままにの体がずるんと引き上げられる。
漸く乾いた地面に下ろされて、安堵の気持ちからへたり込んだ。
「ううぅ……ベジータ、ありがと……」
「……礼には及ばん。次は無いと思えよ。それから、とっととそれを切れ」
「え……」
顎をしゃくるベジータの言葉の意味が分からず視線を下に向ける。
重たい粘液に浸かっている間は気付かなかったが太股の辺りに様々な太さの蔓が何重にも巻き付いていた。
濃い液体が纏わりついていたせいで感覚が鈍くなっていたのだろうか……。戦闘民族である自身はもう少し鋭敏な感覚を持っていると自負していたのだが。先程体が上がらなかったのは恐らくこれが巻き付いていたせいと思われる。
ベジータが力任せに引っ張ってくれたおかげで何本かは千切れたのだろう。力なくへばり付いているだけの蔓も散見される。しかし比較的太い蔓や長さに余裕のある蔓は刺激を感じたのか太股にぐっと食い込んできた。
「な、何か……どんどん締め付けてきてる……」
食い込み始めた部分からぎちぎちと音が聞こえてきそうなほどきつく掴まれている。を掴んでいるのは植物のはずなのに、意思すら宿っているのではないかと思えるほどの強さで。
「いたた……何で急にこんなキツくなるの……」
植物が痛みまで与えてくるなど相当だ。は足を持ち上げ、絡みついている蔓の中でも一番太いものを掴む。それは所々にぼこぼことした瘤があり、粘液に塗れてぬらりとしているため触るのはかなり躊躇いを覚えたが致し方なく。
ぬるつく表面の感触に滑りそうなのを堪え、ぐ……っ、と力を籠め左右に引くとやがて蔓の表皮がブチブチと裂け始めた。
「ぅわ……」
裂けた部分から樹液のようなものが染み出しの腕を伝う。それだけならまだしも、一部の裂けた瘤からは紫色の小さな種のようなものが一緒になって零れ落ち、を生理的に嫌な気分にさせた。
どうやらこの植物は蔓の瘤にびっしりと種を蓄えているらしい。
つぶつぶとした物の集合体は鳥肌を覚えるほど気持ちの悪いものだったが、零れ落ちる種を見たベジータの言葉には更に背筋を凍らせることになる。
「その様子じゃお前の腹に種でも植えるつもりだったんだろうぜ」
「え……っ?」
「お前が落ちた地面の陥没部分は罠だ。苗床としての栄養分を蓄えた生き物を誘い出して罠に嵌め、その体に種をばら撒いて殖える。そんなところだろう」
見てみろ、とベジータは背後を指さす。
恐る恐る振り向くと、背後の陥没部分からは未成熟な蔓があちこちからぷかぷか浮いていた。その全てがの落ちた粘性の泥の中から生えている。細めの蔓もあれば太めの蔓もある。
もしかして、元の苗床の大きさや栄養分で成長の程度が変わるのだろうか……。ならば今しがた引き千切ったばかりのこのご立派な蔓の苗床は、さぞかし栄養分も豊富で大型の生き物であったことだろう。あの濁った泥の中に引きずり込まれる形で溺死し、体中に種をばら撒かれた後の何かがの足に絡みついていたのだ……。
「き、気色の悪いこと言わないでよね……!」
「事実だ。何か強い匂いを感じたとか言ったな。大方染色体レベルでメス種にだけ作用する成分なんだろう。お前が感じて俺が感じないならメスにしか作用しないと結論付けて問題ない」
「そんなの分かんないじゃない。あたしの方が鼻が利くかもしれないでしょ!」
「お前如き下級戦士の血にこの俺が劣ると思っているのか?寝言は寝て言うんだな」
冷たく吐き捨てられる台詞を否定するだけの根拠をは持ち合わせてはいない。
事実としては下級の生まれであり、ベジータは将来を有望されていた王族の長子。既に名も襲名し、順調にいけば次代の王であったに違いない。そしては彼の命令でどこなりへとも出向き、その先を蹂躙し、征服し、彼や種族のために命を果たすはずだった。
そう、こんなに近くにいることも、ましてや命を助けるために手を引いてもらうことなども無いはずだったのだ。
これ以上を望むのは贅沢が過ぎるのかもしれない。
身分というものがある。既に絶滅しようとしている種がそんなものを掲げるというのも滑稽かもしれないが。しかしその只中で生きていたベジータにとっては意識の根底に強く刷り込まれているものなのかもしれない。
血統の見えない壁は超えられるような高さではないのだろう。
は力なく引き千切った蔓を地面に投げ捨てた。



……おかしい。
さっきからとてつもなく体が重い。のろのろとベジータの背中についていくが、少しずつ距離が離れている気がする。
を泥から引き上げた後、ベジータはをじっと見た。そして急に空中に浮き上がったかと思うと、付いて来いとだけ言い放ち何かを目指して飛び始めた。
そういう気紛れはいつものことなので、特に気にもせずついて行ったのだが、飛び始めて五、六分程経った頃に戦闘後のような倦怠感がの体に圧し掛かってきたのである。
それに加えて何だか呼吸も苦しい。伸縮自在の戦闘服は、決して体の動きを妨げない筈なのに、窮屈になった気がして脱いでしまいたい衝動に駆られた。
それでも浅い呼吸を苦しく続けながら、無言でベジータの後ろをついて行く。何処に行くつもりなのだろうか。
「おい、遅れるな。さっさと飛べ」
「は……っ、は……っ、わ、分かってる……でも、苦しくて…………」
「ならば尚更急ぐんだな」
「どういう、こと……?」
途切れ途切れに問い掛けても返答は無い。情け容赦のない性格なのも知っているが、一言答えを返してくれても良いだろうに。
が迂闊に泥に落ちたことを怒っているのかもしれない。戦闘時、ベジータの体力について行けずにしゃがみ込んでいたら、本当に置いていかれたことだって何度もある。
今回も置いていかれるかもしれないな……そんな予感を頭の隅に感じつつ、肩で息を繰り返して追い縋っていたら、不意にベジータが急停止した。
「あの水辺が見えるか?上流だ」
「……え、……?」
ベジータが指差す先に太陽を反射している光が見える。
かなり小さな水辺のようだ。それでも細い水流が、今ベジータとが来た方向へと向かって流れ出いる様子も見受けられた。
「見える……」
「あそこで体を洗え。上流なら毒も少ない筈だ」
「……!」
物凄く驚いた。
まさかベジータが泥を落とせる場所を探してくれていたとは。
「置いていかれたくなかったらもたもたするな」
「う、うん……。ありがとう……」
体はかなり苦しかったが、何とかよろよろと地面に足をつける。見た目には清流に見える透明な水辺だ。
海の件もあるので慎重に手をつけてみた。海に爪先を浸した時に感じた痒みは全く感じない。無毒ではないかもしれないが、実害も無いだろう。
先程から息苦しく、脱いでしまいたいと思っていた戦闘服を脱ぐことが出来るのも嬉しかった。故にはすぐさま戦闘服と下着を脱ぎ捨て、水の中に体を投じた。と、言っても上流なだけあって浅い。腰くらいまでは水に浸かることが出来ても、肩まで浸すことは出来ない。それでも裸になった開放感は気持ちが良かった。窮屈さも少し和らぎ、大きく息を吐く。
「ふはぁ……冷たくて気持ち良い。……それにしても、ベジータは何を調べようとしていたの?」
森の中を歩き回り、泥に落ちてしまったことへの恨み言ではないのだが、そもそもベジータが森を調べるなどと言い出さなければ泥塗れになることも無かった。
生命反応は殆ど無い土地を確認する意味とはなんだったのか。
「……スカウターで感知できる生命反応は有機体に限られる。そういうことだ」
「や、それじゃ分かんないよ」
「生命反応が無くとも無人戦闘機が置いてある可能性が否定出来んだろうが。……まあ、杞憂だったがな。この森は毒で生物を拒絶している」
「何で毒って分かるの」
「この上流にお前が浸かっても問題ないからだ。上流が清浄で最下流の海が有毒ということは、この森を通って行く間に毒が混入する裏付けになる。つまりこの森は毒で有機体を遠ざけている」
珍しく詳細な返答が貰えたことにまたしても驚く。面倒だと感じたら口を開かないのがベジータなのに。
もしかして本当は多少でも機嫌が良いのだろうか……。
は試してみることにした。
「ねえ、そっち暑いでしょ……?ベジータも一緒にどう?」
「……つまらんことを言ってないで念入りに泥を落とせ」
「でも、あたしどろどろの手で掴んじゃったし……。せめてグローブくらいは洗ったら?」
に言われ、ベジータはふと自身の手を見た。グローブの素材こそ貫通していないものの、確かに粘液がべっとりと付着した跡がある。
ベジータとしては思うところがあってに体を洗わせているが、これも洗っておかねば困ることになるかもしれない……。仕方がないか。
ベジータは足取り重くから見て下流へ近付き、グローブごと水の中に手を突っ込んだ。ざぶざぶ乱暴にグローブを擦り合わせる。
そんなベジータの方に恥ずかしげもなく体を向ける。寧ろその肌を見せるような仕草でベジータの傍へ這い寄る。
「ねぇ、裸のメスが隣にいてもベジータは何も思わないの」
「色情狂め。お前はそれしか言うことが無いのか。お前がラディッツと組んでいたら今頃苗床になって、くだらん話も出来なくなっていたかもな」
「でもならなかった。ベジータが助けてくれたから。体でお礼しようか?」
「……生憎と下品なメスは願い下げだ。体が終わったら戦闘服も必ず洗え。時間が掛かっても構わん。必ずだぞ」
ベジータは水から引き上げた両手からグローブを引き抜いた。乾かすつもりなのであろうと容易に想像が出来る。しかし、普段きっちりと戦闘服を着込み、グローブも外したところを見ることは就寝時以外で殆どない。そんなベジータの手を白日の元で目にしたはぞくりとした。
いけないものを見たわけでもないのに、小さな罪悪感でも覚えるかのような……。
「う……は、…………」
突如、じわりと下腹の奥に何かがわだかまるような気がした。ねっとりと熱い感覚。何かにお腹の中を掴まれたような気分とでも言えば良いのか。
嗚呼、爪先が痺れる。周囲の水は冷たいはずなのに、体を伝う雫は仄かな熱を帯びてさえいる。淡い微熱が体の内側から身を灼き始めているのだろうか。
急激に体が力を失い、は水辺の淵にしなだれかかった。
「チッ……遅かったか……」
その頭の上でベジータが舌打ちする。
「……な、何が……?」
「引き上げた直後から下品に尻尾を毛羽立たせておいて白々しいぞ。発情したメスの匂いまで撒き散らしやがって」
「はつじょうって……あたし、そんな、つもりは……」
弱々しく反論しながらも、しかし、心の底では無防備に晒されたベジータの手に一瞬の興奮を覚えた自覚がある。
尻尾の事までは気が回らなかった。何せベジータについて行くだけで精一杯だったのだ。生理的な反応を示していたなんて気付かなかった。
「あの泥溜まりにはそういうものが含まれていたってことだ。面倒なことになる前に洗い落とさせるつもりだったが……」
「それって、もしかしてあたしを気遣ってくれてたの……?」
「それこそくだらん。誰がお前なんぞ」
不快そうに眉を顰めを睨み付けるベジータ。
酷薄な視線だが、今のにはそれすらも冷たい刺激である。呆れたように腕を組むベジータを見上げると、手こそ見えなかったがアンダースーツの袖口から手首がほんの少しだけ見えている。
再び、体がぞくりと粟立った。
「…おい、滅多なことを考えるな。匂いがキツくなるだろうが」
ベジータが顔を背けて後ずさりする。
それは、から立ち上るメスの匂いに多少でも何かを感じ取ってしまうからなのだろうか。番うことは出来ずとも、少しは衝動的な気持ちになってくれるのだろうか。
僅かな期待がの心に影を落とす。普段は望まないようなことも、望んでしまいそうになる……。
「……ねぇ、もし、もしもだよ……。あたし……ベジータが良い、ベジータが好きって言ったら……抱いてくれるの」
この問いかけはベジータにとって予想外の言葉であったのだろう。
を睨み付けていた視線が僅かに揺らいだ。本当に僅かに、一瞬だけ。それでも普段のベジータであれば返答はなかったかもしれない。気に入らない質問に答えるような彼ではないのだ。
しかし動揺からかベジータは重い口を開く。
「……同情くらいはしてやっても良い」
恐らくは出来る限りの譲歩の答え。
嗚呼、その同情は一体何に対して向けられるのだろう。
気持ちに応えないことへの同情か。
それとも体を毒されてしまったことへの同情か。
「なら同情で良いから……。体が重くて苦しいのは本当だから、助けて……」
思い出だけで、と思ったわけではない。一度だけでいい、なんて殊勝な考えもない。ただ欲しいものを欲しいと言わずに後悔することはしたくない。そのチャンスがあるのなら、手を伸ばさなければ。
の求めにベジータはややの間を置き、しかしやがて溜め息交じりに水辺の傍まで足を進める。先程はのメスの匂いを嫌って距離を置いたというのに。
「次は無いと言った筈だ。引き上げてやるつもりはない。早く上がれ」
「……うん」
先程の泥とは違い、抵抗も少ない水に浸かっているのだからベジータの手を借りずとも容易に上がることが出来る。体は重いが蔓の邪魔もない。
裸のまま水から上がりベジータの前に立った瞬間、ベジータの手がの頬に直に触れた。
「んんんッ……ベジータ……」
彼の意図は分からなかったが、それだけで胸の奥がツンと痛くなり思わず頬を擦り付けてしまう。そんなの行動をベジータは振り払ったりしなかった。寧ろ輪郭を包み込むようにすると、親指でそっと唇をなぞる。
「はふ……」
嫌がられるかもしれないと危惧しつつ、ほんの少しだけ唇を開いて指の腹を舐めてみた。ベジータが不快そうにしたら止めようと上目で様子を伺う。しかしの予想に反し、ベジータは顔色一つ変えない。それどころか親指をの口の中へ押し込んできたのである。
「んっ、ふ……んちゅ……、ぷはっ……あぅン……」
尖らせた舌先で爪の形をしっかりとなぞり、カーブを描く先端をちゅぱちゅぱと吸う。こんな好き勝手が許されたことなど滅多にないから嬉しくて、夢中で味わった。
「フン、だらしない顔しやがって。尻尾もこのザマか」
ベジータはの腰を抱き寄せると、目に見えて毛羽立っている尻尾の根元をぐっと掴む。そしてそのまま手を滑らせ先端に向かって撫で上げた。
毛並みを落ち着かせるような手つきをしているくせに、思惑は全く逆だからタチが悪い。尻尾の付け根にぞわりとした快感を覚え、はベジータに縋りつく形で体を寄せた。仄かにベジータの汗の匂いを感じる。
「は、あァ……ベジータ……、ベジータぁ……」
こんなに近くでベジータの肌の匂いに触れたことなんてない。発情の熱に浮かされるままはベジータの首筋にかぶりついた。
得も言われぬ彼の味が口の中に広がり一層の発情を促される。
「はぁっはぁっ……んんぅ、ベジータ、美味し……」
かぷかぷと歯を立てずに唇で噛み付いて来るくすぐったさ。徐々に濃くなるの発情の匂い。嫌でもオスの本能を刺激される。
ベジータは腰に巻いていた尻尾を解くと、その先端での下腹をさわさわと撫でた。
「ん、ん……、は、ぁあん……おなか、くすぐったい……」
お臍の周りに小さな円を幾つも描かれると腰が甘く震える。
「何だ、気に入らねえか?これが気に入らんのならこういうのはどうだ」
すり、と足の付け根の辺りを往復しながら、尻尾の先端は熱を帯びる肌を辿り、お尻の丸みを優しく撫でて最終的にの尻尾を絡め取った。
他人の尻尾が巻き付いて来るなんて初めての経験である。誰にも触られたくない弱点とでも言うべき部分がこんなに密着して絡み合っているなんて……。
「あぁん……尻尾、そんな風に……やらしいよォ……」
絡まり合い巻き付いたベジータの尻尾の先端が、器用にの尻尾の先端に擦り付けられる。それでなくともデリケートな部位なのにふさふさした毛の感触がとても刺激的だった。
「はぁはぁ……やだあ、それ、エッチ…………」
「だが悪くないだろう?」
反射的にくねるの尻尾に合わせて、ベジータも緩やかに巻いたりきつく力を籠めたりする。尻尾を尻尾で愛撫されるなんて想像したことすらない。嗚呼、と何度も溜息混じりの喘ぎ声をあげてはベジータの胸元に額を押し付けた。
冷たい戦闘服の感覚が伝わる。
その下の彼の肌は、今どうなっているのだろう。自分と同じに熱いのだろうか。体中に響くような鼓動に震えてはいないのか。
「ねえ、ベジータも……脱いで……」
不躾にも返答を待たずに彼の戦闘服の裾を引っ張る。すると、ベジータはの手の上にその手を重ね、自ら戦闘服を捲り上げた。
「大人しくしていろ。同族のよしみだ。最後まで付き合ってやる」
ぎゅ、と尻尾の根元がきつくなりは一瞬にして足が力を失うのを感じた。ベジータに縋りながら何とか崩れないよう体勢を保つ。
「どうした?立っているのがやっとか?」
「ぃあッ……!ああ、あぁ……」
戦闘服を脱ぐベジータの尻尾の力が更に強くなる。
「だめ、だめ……尻尾、だめ……やだ、ああぁ、はっ、はっ……」
与えられる尻尾の刺激が足の間に伝わっていく。まだ殆ど体を触られてもいないのに、じっとりと濡れる感覚を覚え始めていた。
全身がもどかしく痺れる。
「……お願い、ベジータ……尻尾だけじゃ、おかしくなりそう……。もっと、あたしに触って……」
漸く戦闘服を脱いだベジータに媚びるような仕草で裸の胸を押し付けた。彼の胸板に押し付けられた膨らみが柔く潰れる。そんな程度で誘発されてはくれないのだろうと思っていただったが、意外にもベジータはの腰を改めて抱き寄せるとお尻の丸みをぎゅっと掴んだ。
そしてほんの少しだけ左右に開くと、の尻尾に絡めていた自らの尻尾を解き、お尻の割れ目を伝うように這わせ始めた。
「ぅあ……、ん、や……そ、そんなところまで……」
ふっさりとした毛の感触が後孔をくすぐり、その下にまで潜り込んでいく。嗚呼どうしよう、このままでは確実に彼の尻尾を濡らしてしまう。
戦きながら見上げるとベジータはやや首を後ろに反らし、目を細めてを見つめていた。いや、見つめていると言うよりも観察しているのかもしれない。視線が舐めるように顔から胸へ、そして尻尾の蠢く背部へと移動していくのが見て取れた。
「何だ、この程度でもうぬるぬるにしやがって。俺の尻尾が濡れたぞ、どうしてくれる」
「くぅう……んン……ごめんなさい……。体が勝手に……」
生理的な事象を責められてもどうしようもないのに、そんな言葉を浴びせられてお腹の奥がきゅうんと震えた。性の興奮を感じて震える膣口にベジータの尻尾の先端が意地悪く押し付けられる。
「手始めにコレでも咥え込んでみるか?」
器用にこつんこつんとノックするような行為を繰り返され、浅ましくも腰が揺れそうになり必死で堪える。
「し、しっぽ……そんなこと、したことないよォ……」
「奇遇だな。俺もだ」
そういう割にはの愛液に濡れた先端を更にぐりぐり押し付けてくる。このまま続けられればその内ベジータの尻尾を受け入れてしまうかもしれない。セックスに正解などないのだろうが、それは余りにも尋常の行為ではない気がして。
「はぁ、あのね……、しっぽじゃ、なくて……ちゃんと、ベジータが……欲しいの……」
は震える指先でベジータのお臍から下の部分をすーっとなぞった。核心的な部分は避けたものの、これだけできっと意図は伝わったことだろう。
「……」
一瞬無言になったベジータが、見上げるに顔を近付けてきた。
もしかして、唇で触れてくれるのだろうか。心臓が一層早くなる。
自然に目を伏せてベジータから与えられるその瞬間をうっとりと受け入れようとした。しかし。
「痛ゥ……ッ」
あろうことかベジータはの唇に触れるのではなく、その首筋に噛み付いたのである。容赦なく食い込むベジータの歯は、の肌に赤い痕をしっかりと残した。
「は……っ、は……っ、うぅ……」
淡い痛みの残滓に睫毛を震わせていたら、次はぬるりとした感触がその痛みの上を這った。びく、と体が硬直する。
「あ……ウソ……、ベジータ……」
あのベジータがの体を舐めている。与えられるとは思っていなかった愛撫を与えられている。そう理解した瞬間、体が沸騰したかのように熱くなった。立て続けにベジータは、の胸の膨らみを無遠慮に掴む。
「あぅん……ッ!ああぁ、むね、きもちぃ……」
下から掬うように持ち上げた乳房を先端に向かって柔く扱くベジータの手つき。グローブを外したその手の中で、膨らみが形を変える。
「は、あ、……ああ……ッ」
乳房を引っ張るように揉んでいるせいで一番最後に乳首を軽く抓まれてベジータの手が離れ、また胸の付け根から滑らかに引き上げられる。この一連の動作は非常にもどかしくの性感を揺さぶった。
既に乳首は痛いくらいに膨らみ、刺激を求めているというのに。は思わずベジータの背に腕を回す。これが今出来る限りの催促だった。
そんなの催促を見抜いたのか、足の間に潜り込むベジータの尻尾の先端がいやらしくくねりながら、ちゅるんとの突起の上を滑る。
「んひィ……ッ、べ、ベジー……タぁ……あーっ、そこは……っ!」
ちゅこちゅこと小刻みに動かされ、思わず爪先立ちになりながら背をしならせた。たっぷりと愛液を吸ってぬめった尻尾が容赦無く突起の上を這い回っている。
「あぅんっ、いや、それだめ……!しっぽで、くちゅくちゅ……だめ、だめ……!」
「こんなに濡らして何が嫌だ。嘘を吐くと為にならんぞ」
言いざま、がぷっとベジータが胸元に食い付いた。肉を食まれる痛みに一瞬体が硬直する。首筋よりもくっきりとした歯形を残した後は、やはりそこを丁寧に舐め取った。
痛みと快感の緩急をつけた愛撫には溜め息交じりに体を震わせる。
すると乳房をやんわり掬い上げ、挑発的にを睨みながら、ベジータは遂に胸の先端に舌先を伸ばした。唾液に濡れた赤い舌がゆっくりとの乳首に近付けられる。
「あ……あぁあ…………」
見せつけるような動きから目を離すことが出来ない。脳内では煩いくらいに自分の心音が反響し、しかし口からは荒い呼吸が繰り返されるのみで言葉は何一つ出てこなかった。
ただ、その舌先が掠める瞬間を余すことなく味わいたい。
早く舐めて我慢出来ない嗚呼早く早く……。
──ぷちゅ、ッ……
「ッ、は……!」
焦れったさに戦くの目の前で、とうとうベジータの舌先がの乳首に触れる。たっぷりと勿体をつけられた所為で、瞬間的に腰から崩れそうになる程の快感が鋭く背筋を駆け上った。
ちゅ、ちゅ……と小さな音を立てて何度も軽く唇で啄まれる。
「ふあ、あぁん……あー……っ」
くすぐったさも混じる感覚には何度も小さく背を反らす。無意識に胸を突き出し、催促しているのかもしれなかった。
ベジータはそうやって小刻みな刺激を与えた後、舌でねろりと乳首全体を覆い、膨らんだ部分を宥めるように撫でさすり始める。意外なくらい優しい仕草で。それだけならまだ良かったが、足の間ではベジータの尻尾の先端がにゅるにゅると一定の刺激を与えてくる。
乳首と突起を同時に捏ね回され、の体は自然に高みへと押し上げられていった。
「んんんぅ……ッ!はー……っ、イっちゃうよォ……っ、あぁ、イくイく……はぁあ……っ、あーイく……ッ!!」
びくびくとベジータの胸に縋りながらは呆気なく絶頂を迎える。
お腹の中がぎゅうっと苦しくて熱いのに、寒気がするほど気持ちが良い。手足には甘いびりびりとした刺激を覚える。
他人から与えられる絶頂とはこんなにも気持ちが良いものなのか。
「は……あぁ……あー……、すごい……きもちぃぃい……」
余韻に目を細めて深く溜め息を吐いた。腰のあたりが気怠くて重い。このままベジータに体も意識も預けてしまいたい。そう感じる一方で、はまだ何処か物足りなさを感じていた。
「ベジータぁ……足りないの……、もっと欲しいよォ……。ね、お願い……抱いて、犯して。あたしの体、思い切り乱暴にして」
こんなにも媚びた声が自分から発せられることがあっただろうか。
自ら片足を上げて内側を開いて見せる。散々尻尾で刺激された入り口は、粘液に塗れて物欲しそうに蠢いていた。
「望みを叶えて欲しいなら……そこに這いつくばれ」
獣の体勢になれと命令されたも同然だが、には是非もなく。寧ろこの命令を聞くだけで望みのものが手に入るのなら、と躊躇いもなく膝をついた。頭の上ではベジータの声で矜持がどうとか聞こえるが、今はそんなもの邪魔なだけだった。
少し遅れてベジータの手がの腰を掴む。
そして足の間には熱いベジータの感触がぐっと押し付けられた。尻尾よりもずっと熱を帯びた逞しいその感触はをとても高揚させる。
「あぁ、焦らさないで……それ欲しい、ずぶずぶして、手加減しないでぇ……」
「……淫乱が。少し黙れ。下品なメスは趣味じゃねえ」
既に十分愛液でぬかるんでいるそこは、苦も無くベジータを受け入れていく。狭い内側をこじ開けられる感覚が堪らなく気持ち良い。肌が粟立つ程の快感には小さく身震いした。
「はぁあ……はぁ……あぁぁ……はいってくる、よォ……っ、あー、すごい、……」
「く……、は、……」
真後ろでベジータが小さく息を吐く声がした。セックスが始まってから、初めて聞く熱っぽさを含んだ声。ベジータでもこんな声を出すのかと思うと、猛烈な興奮を感じた。
今彼はどんな顔をしているのだろう。切なそうなのか、苦しそうなのか……それとももっと見たことのない表情をしているのか。
見たい。顔が見たい。反射的には振り返る。
しかし、ベジータの顔を見ることは叶わなかった。
「んうっ、!?んくっ、んっんっんっ……!」
理由は振り向いた瞬間、ベジータが唇に噛み付いてきたから。乱暴に唇を重ね、離れられないように肩を掴まれた。そして性急なことに、唇で繋がったままベジータは律動を始めたのである。
「んうっ、はぷ……っ、んっふ、っ……くぅん……っ!」
突き上げながらも口の中にベジータの舌先が潜り込んでくる。
れろ、と舌先が絡められ、混じり合った唾液が口内に広がった。
「ん……ッ、ふ、っ、んうっ、うぅっ……」
声を出すことも許されず、くぐもった呻き声だけが漏れ落ちる。それでも何とか与えられるものだけは逃がしたくなくて、はベジータの舌を啜り上げた。すると、感化されたようにベジータの腰付きが激しくなる。
「んはっ、はっ……んぷっ……!ふあ、待って、はぁっ……息、出来ない……っ」
呼吸が苦しく、もっと唇を重ねていたい気持ちとは裏腹に体が逃げてしまう。そうやって離れようとするの腕を、ベジータは強く掴んだ。
「ここまできて、逃げられると、思うのか……?」
ゾッとするほどの熱量が籠った掠れ声。性の色に濡れた低い声に意図せずの内側が切なく収縮する。
「ッ……、締めやがる……。……何だ、何に興奮した……?言ってみろ」
「はー……っ、はー……っ、ベ、ジータが……エッチな声、出すから……」
「この俺が……?ハッ、馬鹿を言うな……」
の返答が気に入らなかったのか、ベジータはの上体を地面に押し付けると、更に激しく体をぶつけてきた。押し出された愛液が内股を温く伝う感覚がある。突き立てられて掻き混ぜるように腰を揺らされると、ぐじゅぐじゅと粘液が絡み合う音がして恥ずかしい。
抵抗も出来ないくらいに体重を掛けられ、文字通り地面に這いつくばらされて……それなのに。
「あーっ、あっあっあっ……!すごい、あっ、深いィ……っ、ベジータ、すごいよォ、あっ、あぁっ」
善がり声しか出てこなくて。
ギリギリまで引き抜かれた楔を再び打ち込まれる瞬間が、意識を失いそうなほどに気持ち良い。繋がった部分がじっとりと熱を帯び、その奥にもっと熱い何かがある。そこを押し上げられると下腹の奥がきゅうっと苦しくなって、爪先が硬直するのだ。
「はぁ……っ、はぁっ……ナカ、突かれると……、はぁっ、すごいの、奥、きもちぃ……」
「……ッ、は……」
返答こそなかったが、ベジータが荒い呼吸でぐっと腰を入れてきた。
獣のような浅い呼吸音。普段こういうことには一切の関心を見せないベジータが、今まさにを犯し、腰を振っているのだと思うと堪らなかった。
「ィあっ……!そこ、そこイイ……、はぁ、それ好き……ッ、あぁっ、好き、ベジータぁ……。好き……」
ベジータはの足を持ち上げ更に奥まで抉ろうと腰を押し付ける。
ずんっずんっと下腹の奥に響くような重苦しさがじわじわと広がっていく。それに伴ってお腹の奥のもどかしさが膨らんできた。自然と下腹に力が籠る。
……嗚呼、見え隠れする快感がすぐ傍まで迫っている。
思わずは地面に爪を立てていた。
「好き……!ッ、ベジータ、ベジータ好きっ……イくから、あたし……ッ、もう……ッ……!ねえ、奥に出して、ナカ、ナカでイって……!」
「チッ……ああ、良いぜ、ナカで……っ出してやる……ッ。は……っ、全部、受け取れ……ッ!」
ベジータが一際深くの体内に突き立てた瞬間、地面に押し付けた彼女の体が小さく跳ねあがった。
「──ッ……!!」
声も無くしなり上がる背中がびくっびくっと何度も小刻みに震える。比例するようにの内側が何度も収縮を繰り返し、導かれるようにベジータもまた彼女の体内にたっぷりと注ぎ込んだのだった。
「……はー……はー……嗚呼……、すごい……ナカで、びくびくしてる…………」
収まりきらなかった精液が内股を伝い落ちる感覚がリアルでゾクゾクした。
何度声を掛けても拒絶され続けてきたから、まさかこんなことになるなんて信じられない気分である。もしかしたら既に自身はあの植物に寄生され、都合の良い夢を見ているだけなのかもしれないとすら。
「ねーぇ、ベジータ……あたし夢見てるのかな、何だか、眠くて」
心地よい疲労感に襲われながらもは懸命に振り返ってベジータを見遣った。
ほんの少しだけ髪を乱したベジータは、手の甲で汗を拭っていた。
そういえば、なかなか夜が来ないこの惑星は暑いんだった……。
ゆっくりとベジータが体を離す。暑いはずなのに彼の体温が傍から失くなるのは何だか悲しい。
二度目の同情を賜われる日はもう来ないかもしれないのだ。夢の中以外では。
「眠いのならば寝ていろ。もう少しし…らナッ……とラ…………ツが合…………。…………」
嗚呼、夢の中のベジータは何と言っているのだろう。
遠くて聞き取れない。
でも、聞こえる声が穏やかで安心した。



ふと目が覚めると既にベジータの姿はなく、周りは薄闇に包まれ始めていた。どうやらとうとう夜が来るらしい。結局月に頼ることもなく二人きりで制圧した惑星の黄昏だった。長く太陽に熱されていたこの大地はこれから時間をかけて冷やされるのだろう。
ぼんやりとしながらもは体を起こす。いつの間にやら体の上にはベジータのマントが掛けられていた。多少なりとも気遣ってくれたのかもしれない。しかし脱ぎ捨てた戦闘服はやはり泥塗れで、下着まで泥に汚れていたから着るのを諦めて、マントを肩から掛けたまま水辺に近付いた。
洗えば恐らく問題なく着られる筈だ。
ざぶ、と水に戦闘服を浸して泥をせっせと落とす。はベジータが念入りに洗えと言った言葉を今更ながらに思い出していた。
「起きたか」
ばちゃばちゃ水飛沫を上げて一心不乱に洗っていたら、不意に後ろから掛けられた声に驚き振り返る。
「ラディッツ……。何でここにいるの……?」
彼は別の惑星の調査に赴いていたのではなかったのだろうか。
「調査が終わって戻ってきた。お前、泥の中に落ちて気絶していたらしいな。寝ている間に制圧が終わるなんぞ楽で良かったじゃねえか」
「何よう。あたしだってちょっとは戦ってるし、泥に落ちたのは制圧終わってからだもん」
「で、そんな格好なのか?」
指摘され、はたりと自分の姿を省みた。
ベジータとの事後、そのまま眠ってしまって今。服は絶賛水の中で、マントから見え隠れしている胸元には淡く色付いた噛み跡が残っており、何なら内股を汚すベジータの精液の後始末すらされていない。
泥に落ちて気絶していた、とは恐らくベジータが彼に言った嘘なのだろう。マントを掛けてくれたことは有り難かったが、誤魔化すにしてももう少し言い分は無かったものか。
「良かったじゃねえか。ベジータの尻尾を追い掛け回した甲斐があったなァ」
「ううううるさいな……!ベジータは別に……あたしとどうこうなろうなんて、望んでた訳じゃないし……。……助けてくれただけだよ」
同情だと言った。
それでもの体は素直すぎるくらいで、とてつもなく気持ち良かった。
好きな男の腕の中は格別なのだと思い知らされた。思い出のつもりは無かったが、それでもこの記憶だけで生きていけると思うほどには。
「何を言われたかは知らねえが、ベジータが気紛れでそんな面倒なことするかよ。気に入らなけりゃ首締めて終いだぞ」
「その通りだ。いつまでもつまらんお喋りを続けるならお前の首から締めても構わんぞ」
真後ろから飛んできた声にラディッツは慌てて後ろを振り返った。ラディッツの大きな体で隠れて見えなかったが、いつの間にやら気配を殺して後ろに立っていたらしい。
「ようやくお目覚めか、。新しい戦闘服は用意してある。さっさとこっちに来い」
「えっ、あ、う、うん……!」
肩から羽織ったベジータのマントを手繰り寄せるとは立ち上がった。その後ろをばつが悪そうにラディッツもついて行く。
暫くベジータの後ろをついて行くと、既にナッパも合流していた。
ポッドの近くに立ち、達が戻ってくるのを待っていたらしい。の顔を見るなり傍に歩み寄り、新しい戦闘服を渡してきた。
「ほらよ。ったく泥の中に落ちて使い物にならねえとはな。お前マジでラディッツより使えねえぞ。ちょっとは鍛えろ」
「……だから、泥に落ちたのは制圧が終わってからだってば」
自身、戦闘力ではラディッツにかなり劣るという自覚がある。ベジータやナッパは気軽にラディッツを馬鹿にするが、はそんなラディッツよりも戦闘力が低いためいつだって笑えない。引き合いに出されたラディッツも後ろで眉を顰めていた。
「揃ったところで調査の結果を報告しろ」
ベジータの視線が自分を飛び越えてラディッツに向けられる。
戦闘服を渡し、既に用は済んだということなのだろう。皆の前で裸になることくらいなんともないが、事後の跡が色濃く残る体を晒すのは気が引けるのでじりじり後ずさりしながらポッドの後ろに回って着替えることにした。
それでなくともマントの隙間から見えるの体を見ればあからさまに何かを行ったことは分かろうというものだが、ベジータが何も言わないのでラディッツもナッパも言及はしないつもりらしい。その判断が今は有り難い。
「予測通りちょっと梃子摺りそうだな。まあ時間を掛ければそのうちには」
「……フリーザは実益を好む。時間が掛かりすぎると面倒なことになるかもしれん。地球へはどれくらい掛かる」
地球。
にも聞き覚えのある惑星の名前だった。惑星ベジータの生き残りの最後の一人がそこで生活しているのである。ラディッツの実の弟だ。
その名前が出たということは、とうとう彼を迎えに行くということなのだろう。名をカカロットと言ったか。幼い頃に地球に送られたせいでは彼の顔を知らない。兄であるラディッツでさえ顔を知らないと言う。
まあ、スカウターがあれば見つけることは容易いだろう。それに、既に地球は殆ど生命の存在しない惑星になっているかもしれない。
サイヤ人の子供を抱えた惑星が何年も存続している筈がないのだから……。
地球への距離を聞くベジータの質問に返答したのはラディッツではなくナッパだった。
「地球なら行って帰ってくる間に目的の惑星には到着出来るだろうぜ」
「この俺がいて万が一と言うことは絶対に無いが……最初の計画通り進めるか。ラディッツ、お前はこのままカカロットを迎えに行け」
ラディッツは無言で頷き、ベジータは視線をナッパに移した。
「ラディッツとの合流ポイントの候補はあるか。当該惑星以外の制圧しやすそうな惑星だ」
「そう言うと思って確認してあるぜ。近くに遊びに丁度良さそうな衛星がある。ラディッツが合流するまでの暇潰しにうってつけだ」
ナッパがスカウターを操作すると、侵略予定の惑星とその衛星の座標、加えて簡単な環境の説明がのスカウターにも送られてきた。
次の侵略先は現在の惑星とは比べ物にならない規模の惑星だ。どうやら文明の発展も凄まじく、資源をたっぷりと蓄えているらしい。成る程高く売れそうだと理解できる。しかし多勢に無勢という言葉があるように、侵略者である自分たちはたった四人しかいない。カカロットを含めてさえ五人だ。惑星規模が大きくなるほど数の不利が著明になる。より戦闘力に秀でたラディッツでさえ見劣りする時があり、今回はそういう侵略になるのだろうと思った。
とりあえずちゃんと生き残ろう……と控えめな決意を心の中でしていると。
「おい、
今度はベジータがつかつかと歩み寄ってくる。
既に戦闘服はきちんと着ているし、体の重苦しさも解消されている。強いて言えば事後の怠さのような感覚が無いわけではなかったが、それも移動中には改善されるだろう。
「なぁに?」
「お前は今回外れろ。先にフリーザ軍に戻れ」
戦線離脱の命令をしながら、のスカウターを無遠慮に取り上げてしまう。たった今この四人でも梃子摺りそうだという話をしていたのではなかったのだろうか。なのに離脱せよとは。
「え……、な、何で急に……」
「代わりにカカロットを入れる。カカロットの戦闘力がどうなっているか知らんがラディッツの弟だ。お前よりは役に立つだろう」
「や、や、や、だってカカロットの戦闘力があたしより上じゃない可能性だって……」
流石にラディッツには及ばないものの、戦闘訓練を受けていない筈のカカロットと自身であればそんなに差はないはずだと思う。何せカカロットは下級戦士の血筋だし、と言いかけて飲み込んだ。その言葉は確実に自身に返ってくる。
「反論はいらん。準備が出来次第出発するぞ。ラディッツは地球、は帰投、俺とナッパは当該惑星の衛星だ」
早くしろ、とラディッツとナッパにも言い放ちベジータはが地面に置いていたマントを拾い上げると、のスカウターを持ったまま空に飛び立ってしまった。ベジータが飛び去った方向は二人がこの惑星に降りる際に乗ってきたポッドがある方向である。スカウターに送信された座標が無ければ、ポッドを所定の惑星まで飛ばすことが出来ない。
そしてスカウターを取り返そうにも、ベジータから力づくで奪えるはずもないのだ。あのベジータが一度決めたことを撤回したりはしないことをは良く知っている。
「……あたしの言い分ちょっとくらい聞いてくれたって……」
本当に置いて行くつもりだ……。力無く肩を落とす
戦闘服を新しくしてくれたのはてっきり次の戦いが待っているからだと思っていたのに。
そんなの背中をナッパが勢いよく叩く。
ぱぁんと小気味良い音が響くと共に、痛みで思わず咳き込んでしまった。
「……っは、ちょっと、何するの!」
「ベジータが何も言わねえ手前言わなかったがよ、お前ら色々あったんだろ?子が出来たと思ってる訳じゃねえだろうが、そういうことじゃねえのか?」
王子の子がいるかもしれないことをしたと分かっているのならもう少し大切にしてくれても良さそうなものなのだが。
それにしても本当なら側室にすらしないような下級戦士のメスを同情だけで相手にしてくれたのではなかったのか。体の内に籠った熱に苦しむを抱いてくれたのは、同胞への分かりにくい優しさの表れではなかったのか。
皆と別れ、結局フリーザ軍へと帰投するコースで飛ぶポッドの中で自身のお腹をそっと撫でてみた。
の内側に残されたのは次代の種とでも言えば良いのだろうか。それは既に絶滅が約束された種族の未来の可能性の一つ。
嗚呼。
分かりにくくも優しい次期王の為に根付いてくれればいい。やがては結実し、宇宙へ羽ばたく次世代の遺伝子として。