俺の腕で眠れ

「これは酷い」
訓練と称して物陰に連れ込まれた。
元々ターレスが自分を危ない目で見ていることは薄々気付いていたけれど。
が純正のサイヤ人であると言うだけで目の色が変わった節はあったのだ。そこに女と言う要素が加わってしまったのが不運だった。いや、の場合不運と言うには語弊があるかもしれない。
寧ろある意味幸運であったかもしれないとすら。
「酷い?心外だなァ。壊れ物みたいに扱ってやったろ?」
「それは否定しませんけど。全く合意の上じゃないですよね」
「良くなかったか?」
「最高でした」
この世の中にこんなにも気持ちの良い行為があるなんて。
昔から自分は快楽には弱い方だと思っていたけれど、目の前のターレス曰く、それがサイヤ人の本質なのだそうだ。宇宙の壊し屋と呼ばれる彼が言うと説得力も相当である。
昔から自身も、自分は他人とちょっと違う気がすると思ってはいたのだ。
それは時折脳内を掠める衝動を他人が持っていないと気付いた時に端を発する。
他人に感じる違和感と言えば良いのか、とにかくズレのようなものがずっとあった。それが拭い去れないままに気持ちを押し殺す日々を過ごしていたが、自身の正体を知って初めてその違和感の理由に気付いたのである。
自分は、故郷と呼ぶべき惑星を滅亡させるために送り込まれた異分子だったのだ。
原因は分からないがその目的を忘れることで失い、平凡に生き、そして最終的にタイムパトローラーに収まったのがと言うサイヤ人だったのである。
その生き方はサイヤ人の常識に当てはめると全く間違ったものであったが、思い返しても悪い記憶ではない。
ただ、胸の内に存在していた違和感の正体をたった今ターレスによって知らされたは、腑に落ちてしまうことに複雑な気持ちを覚えていた。
「修行して強くなりたいんだったか?良いぜ、じっくり教えてやるよ。とんでもなく痛いことから死ぬほど気持ちいいことまでたっぷりとな」
を体の下に敷いてニヤニヤ笑うターレスの顔が鮮明に脳裏に焼き付いている。
確かに痛かったし、そして死ぬほど気持ち良かった。彼の言葉に嘘はなかった。
それにしても事後とは気怠いものなのだなぁと地べたにぼんやり座り込んでいたら。
疲れただろう?食えよ。
優しい振りで差し出された奇妙な実をは無意識的に受け取った。
よくターレスが食べているものだと分かる。普段は一つも分けてくれないから、てっきり食べさせて貰えることなどないと思っていた。
ターレスの言うとおり疲れていたし、あまり食欲はなかったが、喉は乾いていたので勢い良く歯を立てた。ぷじゅ、と溢れてくる果汁を啜り上げながら飲み込む。
すると、不思議なことに体の奥から活性化するような感覚に囚われた。
何だか体が熱を帯びるような、血流に力が注ぎ込まれるような……何とも言えない感覚である。
「先生、何か……変な感じが……」
「気にするな。別に毒でも何でもねえ。そのうち嫌でもクセになってくるぜ」
笑いながら自身もその実に齧り付く。
言葉の不穏さには少しだけ不安になるが、確かに疲れた体が軽くなり、淫蕩の果ての怠さが引いていく。
結局丸々一つを食べ尽し、その日の修行は終わったのだった。



ターレスはいつも喧騒から離れた高台の、鬱蒼とした木陰を選んで過ごしている。
誰かと交わるのが好きではないのか面倒なのか。
もどちらかと言えば静かな環境で少人数と過ごす方が好きだ。
幼少期より周囲との僅かな心の中のズレを感じてきた彼女は、自分の気持ちを表情や口に出すのが苦手である。
自分は皆と少し違う……。それを感じる度に余計なことを口にはすまいと自戒を続けた果ての現状であった。
ただ、ターレスも同じように静かな環境を好むのだと仮定しても、彼がのように自己表現が苦手なのかと言えば必ずしもそうとは言えないと思う。
底のしれない腹を持っていることは何となく肌で感じられるものの、ターレスは感情表現豊かな方ではないだろうか。
常にしかめっ面のベジータ先生などを見ているとそう思えて仕方がない。
ターレスは根っからの放蕩者のようだから、思想もきっと自由なのだと思う。
「ターレス先生。こんにちは」
「よう」
普段と同じ時間に現れたをターレスは短い返事で迎える。
その時、彼女がスカウターを付けていることに気が付いた。
そんなものが無くとも気を感知出来るには無用の長物に感じられたが、デザインを見てターレスは否定的な感想を飲み込む。
「……何だそりゃ、俺と同じやつか?」
「はい。先生、いつもいる場所が微妙に違うでしょう?気で探せなくもないんですけど、もっとピンポイントに居場所が見つかるから便利だって教えてもらって買ってみたんです」
どうですか?
普段は感情表現が苦手なも、今日ばかりは少しはにかんで見せる。
なんせターレスと全く同じ物を選んだのだ。
多少の照れを感じてしまう。
「ふぅん……まあ、悪い気はしないぜ。サイヤ人らしくなったんじゃねぇの」
タイムパトローラー用の戦闘服を着ているとはいえ、スカウターをつけると途端に同族感が増す。見た目の印象とはかくも重要なものなのか。
「そういや、お前ずっとその格好だな。女なんだからスカウターなんかより服でも買えよ」
「あぁ……、いえ、あたしはそういうのは……。お金が無いわけでもないんですけど……どうせ仕事ばかりですから」
仕事ばかり。
なるほど確かににとってターレスに会うのも仕事の一環だろう。
何故なら今こうして顔を突き合わせているのは逢瀬のような色っぽい理由からではなく、ただの修行が目的なのだから。
それならまた、修行と称して犯してやろうか。
満更嫌そうでもなく、寧ろ気持ち良かったと答えたなら抵抗はするまい。
ターレスは下心を持ってに近付いた。
線の細い顎を軽く掴んで自身と視線を合わさせる。見上げてくるは僅かに緊張の面持ちだったが、ターレスの目論見どおり拒絶の言葉は出てこなかった。
「この前は合意してなかったらしいが、抵抗しても良いんだぜ」
試すように唇に指を触れさせる。
の睫毛の先が震えた。しかし、やはり嫌がる素振りはない。
寧ろ先を促すように瞳を伏せた。
ターレスは意地の悪い気持ちが湧いてきて、顎から手を離すと、の腰を抱き寄せてお尻の丸みを確かめるように撫でまわす。
「何だよ、そんなに期待するほど前のが良かったのか?」
答えにくい質問には頬が熱くなる。
事後は羞恥心が薄くなっていたというのもあって、素直に最高だったと伝えたではないか。
改めて聞くなど本当に……。
「悪趣味な質問、止めてください」
「そうか?可愛い生徒をちゃんと感じさせたか、先生としては気になるんだよなァ」
お尻を撫でていた手がの尻尾の付け根に触れた。
優しく、根元から先に向かって何度も撫で上げる。
「ああ……し、尻尾は、……」
「根元が好きなのバレてるんだよ。この前握ってやったらきゅうきゅう俺を苛めやがって」
「し、知りません!体が勝手に……!」
「あの感覚、最高だったぜ。思い出して何回も抜いちまった」
顔を近付けて、わざと耳元で興奮に掠れた声を出すのは反則だ。
はお腹の奥が重苦しく、足の間に熱が籠もるのを感じる。
焦れったい尻尾への愛撫が更に物足りなさを煽っている。
今すぐにでも抱いてくれとせがめば望むものが手に入るのだろうか。
が心の中で葛藤していると、不意にターレスが全ての行動を止めてから体を離してしまった。
訳が分からずきょとんとターレスを見ると、最初に出会ったときのような不敵な笑みを浮かべているのが目に入ってくる。
「今日の修行はこれで終いだ。ちょっと用を思い出したんでな。お前はいつも通り時の界王神の任務に行け」
「……えっ」
いきなりの突き放す言葉。
戸惑うにじゃあなと声を掛け、ターレスは飛び去ってしまったのだった。



、お疲れ様!貴方の先生から荷物を預かっているわよ?」
任務から帰投したに時の界王神が駆け寄ってきた。
その手には何やら大きな包みを抱えている。
手渡されたそれは飾りも素っ気もない、ただの紙袋である。見た目の想像より少し重くて、ふかふかした何かが入っているようだ。
「何ですか、これ」
「知らないわよ。ただ渡せば分かるって言っていたけど……心当たりないの?」
「ないです」
心当たりも何も、今日ターレスはちょっと会話を交わしただけで何処かへ行ってしまったじゃないか。抱き寄せて性感帯を撫で回しておいて、急に突き放したのは彼の方なのに。
釈然としない気分ではそれを受け取り、帰路につくことにした。
時の巣を出ると、既に夕暮れの太陽が辺りを赤く染め始めていた。
こんな時でもターレスは薄暗い木陰で一人過ごしているのだろう。赤い陽光がだんだんと翳り、周囲が暗闇に包まれていくのを、彼はどう感じるのだろうか。
寂しいのか。
寧ろそれを待っているのか。
一人で朝を待つことも、もう慣れてしまっているのか。
余計な詮索は嫌われそうだから遠慮している。例えば過去の遍歴とか、例えばこの前の行為とか。
勿論気紛れなんですよね?
別に特別な意味は無いんですよね?
ただの発散行為なんですよね?
どの言葉も飲み込んだ。自分の言葉を押し殺してしまうこと、それは寧ろにとってはいつものことでもあった。
折角同族に巡り合っても自身に染み付いた性根は変わらないのだなと今でも思う。
それでも脇に抱えた紙袋の重みに感じるどきどきとした気持ちを抑えきれない。
誰かから贈り物を貰うなんて滅多にないことだ。誰からのどんなものでも気になるのは当然のこと。
しかもそれが執着心のなさそうなターレスからと思えば気が逸って仕方ない。
部屋に帰り着くなりは包装を丁寧に解いた。
取り出して見て一瞬声を失う。
「……服……」
出てきたのはブラウスとスカートだった。
間違いなく女物だし、手触りで新品と分かる代物。まさか、ターレスが思い出した用事とは……。
「先生……」
飛び去る後ろ姿を呆然と見送った記憶は新しい。
性的な気持ちを煽っておいて何故、と何度も思った。だけど今、その何故の気持ちが氷解していく。
嗚呼、自身は一体どうしたんだろう。今凄く胸が苦しい。
嬉しいはずなのに鼻の奥がつんと痛くて涙が出そう。
不思議な感覚を味わいながらブラウスをそっと広げてみる。
白い滑らかな生地は、当然だが、いざ戦闘面となると全く心許なく見える。これはそういうための物ではないのだ。
利便性や実用性など必要としていない。
ただ、身を美しく見せるためだけの……。
いても立ってもいられなくて、はタイムパトローラー用の戦闘服を脱ぎ捨てた。
そして紙袋ごと全て抱えてバスルームに向かう。
任務が終わったばかりの汚れた体で試着するなんて勿体無いことは許せない。
頭からお湯を被り、とにかく念入りに体を洗う。
早く着てみたい気持ちと、絶対に汚したくない気持ちが心の中で衝突しているのが分かった。その全てにどきどきしている。
指の先まで痺れるような柔らかい緊張は、今まで味わったことのない感覚だった。
こういう気持ちをなんと言えば良いのだろう。
焦れったい気持ちで髪を乾かしながら、は持ち込んだ紙袋の底がまだ僅かに膨らんでいるのを見つける。
まだ何か入っているのだろうか……。
思い至る節はないが、手を突っ込んでみると確かに柔らかい何かに触れた。
「まだ何かあるの……」
これ以上喜ばされたら心臓が早くなりすぎて保たないかもしれない。
そんな思いで取り出された最後の品には言葉を失った。



翌朝。
洋服を貰っておいて戦闘服で向かうと言うのは流石にあり得ないだろう。
しかしは躊躇っていた。
似合う似合わないの問題も多少あるが、最後に見つけてしまった物のことで。
いっそ気付かなかったふりをしようか。小さなものだったし、洋服に浮かれて注意深く中を見なかったことにすれば……。
嗚呼、でも意図から外れたことでがっかりされたらどうしよう。
彼は成果を上げれば褒めてくれる。そう、サイヤ人の先生には珍しく、褒めて伸ばすを実践してくれる先生だ。
故にその意図を完璧に汲み取れば、相応の評価をしてくれるに違いない。
「……あああああ……どうしよう……」
項垂れている場合ではない。
ぐずぐずしていると服を披露しに行く時間がなくなってしまう。
多分それが最悪のパターンだ。言うなれば評価Dだ。
ちらりと紙袋を見遣る。
昨日試着した服は全部そこに丁寧にしまったのだった。
鏡の前の自分が思い起こされる。
タイムパトローラーに就いてからは本当に任務と部屋の往復生活をしていたから(タイムパトローラーとはとにかく人手不足らしい。パトローラーは無数にいると聞くのに不思議な話だ)、寝間着以外で女の子らしい私服を着たのは久し振りだった。
きちんとすれば、それなりにも見えるのだなあと自画自賛してみたりもした。
きっとターレスが似合うデザインを見抜いてくれたのだ。
だからこそ、披露しないという選択肢はあり得ないわけで。
「ううう、仕方ないか……今日だけ、今日だけ!!」
深く覚悟を決めて、は漸く紙袋を手に取ったのだった。



スカウターは気を探るよりも楽に、ピンポイントで見つかるから便利だ。と、確かに昨日は思っていたのだ。
しかし今日に限ってはなかなか見つからなくても良かったかもしれない。
贈られた服を着てターレスの前に出るという気恥ずかしさに、なかなか決心がつかない。
故にそーっと近付いて、木の影からターレスに声を掛けた。
「……ターレス先生、こんにちは……」
「よう。どうした?こっちに来いよ」
極めて普通の態度で手招きされた。
もっといやらしい企み顔で迎えられると思ったのに拍子抜けである。
「は、はい……あの、これ先生ですよね?ありがとうございます……」
おずおずと遠慮がちに木の影から出て来たは俯き加減でターレスに近付いた。
しかし。
「へえ、興味無さそうなこと言っておいてそんなのも持ってるんじゃねぇか」
「え、っ……?や、これあたしが買ったんじゃないんですけど……」
「貰いモンか?その割にはなかなか似合ってるぞ」
手放しで褒められて嬉しい気持ちが湧いてくる筈が、何だか会話が繋がらずに違和感だけが増していく。
「あの……これ、ターレス先生が贈ってくれたんですよね?」
「俺が?……全く心当たりがないが」
「ええ?」
どういうことだろう。
確かに時の界王神は先生からだと言ったはずなのだが。
「で、でも時の界王神様は貴方の先生からだって……」
「俺だけがお前の先生じゃないだろ」
「まあ……はい、そうですけど……」
確かにの先生はこのターレスだけではない。
他のサイヤ人の先生もいれば、地球人の先生もいる。他の種族の先生までも。
だから、『貴方の先生』だけではターレスと断定出来ないという彼の主張は正しい。
実際、は贈ってくれた相手を見てはいないのだ。
「本当に知らないんですか……?」
「知らないねえ。俺が女に服なんか贈るように見えるってのか?」
は返事に困り黙り込む。
まさか本当にターレスではない?
でも服の話題を出した先生はターレス以外にいない。
彼以外にあんなにタイミング良く服を贈ってくれる人物など心当たりが全くない。
釈然としないが何一つ断定するための証拠を持ち合わせていないはそれ以上詰め寄ることを躊躇う。
加えてもしもターレスが嘘を吐いているのだとして、その嘘の理由がイマイチ分からない。贈ったものを贈っていないと断ずることに何の得があるのだろうか。
彼は他のサイヤ人達よりも歓楽で奔放で損得に素直だという印象がある。
つまり嘘を吐くならそれなりの理由があるはずなのだ。
しかしにその見当がつかない。
「……まあ、先生じゃないならもう良いです。今日は何をしますか」
「何を……の前に、お前その格好で修行するのか?」
「ああ、そういえば……」
てっきりターレスがこれを贈ってくれたと思っていたから着てきたのだが、ターレスでなかったなら無駄なことだったかもしれない。
戦闘服以外で実技を行うのはにとって初めての経験である。
今この場でターレスに組み伏せられるのは勿論ご辞退申し上げたいところではあるが、訓練用のシミュレーションならば、服が破けようと服が汚れようと全く問題ない。
時の界王神によってシミュレーション内の時間は切り離されており、全てが無かったことになるらしいのだ。
彼女曰く、持って出られるのは記憶だけとのこと。
余談だが時を切り離す関係上、あまり長いことシミュレーションを使用出来ないようになっている。
時の止まった世界で記憶だけを積み重ねるということは、肉体年齢に対して精神年齢の老いを加速させ得るリスクを併せ持つからである。
とは言え適切に利用するならばこんなに便利なものもない。
服の汚損だけでなく、怪我なども現実世界に影響しない、極端に言えば絶命することもないらしいので、好戦的なサイヤ人の二人が好き勝手暴れようとも一切問題がない。
故には軽い気持ちで頷いた。
「構いません。現実には影響ありませんから」
「それもそうだな。じゃあ行くか」
そうと決まれば善は急げであるのだが、地面を蹴るターレスに続きながらもには服の送り主が気がかりでならない。
一体誰がこんな贈り物をしてくれたのか……。後で時の界王神に詳しく聞かねばならないだろう。
着てみた姿も見せたいし、きちんとお礼も伝えたい。



修行と言っても普段から何をするでもなく、殆ど実践形式なのが先生たちの特徴だった。
特に悟空なんかはものを教えるというよりも感覚的すぎて説明されても分からない。そして彼自身、口で伝えるよりも断然拳を交えたがるので性質が悪い。
顔を見れば組手組手。いや、別にシミュレーション内は安全だから構わないのだけれども。
そう思うとこの前ターレスに手を出された時、彼が先に「シミュレーションは使わない」と言い出したのはやはり裏があったのだ。
実際に攻撃が当たった方が緊張感が出て良いとかなんとか、とにかく口八丁で丸め込まれてしまった自分の間抜けなことと言ったら。
とは言え最高に気持ち良かったのは間違いないし、また次誘われたら拒絶する自信は全く無い。
自分でも不思議なのだが、ターレスとなら嫌な気持ちも湧いてこない。寧ろ、昨日は何故放り出されたのかとすら思ったのだ。
愛する者と血を繋ぐ大切な行為であるはずなのに、怠惰的に快楽を優先してしまう自分が情けない。
意志の弱さを嘆くの頬を、叱咤するように風が撫でる。
シミュレーション内の岩だらけの大地には本物と遜色ない風が流れを作っているのだ。埃っぽい空気すら本物と見分けがつかない。
ターレスと、お互いにせり上がった岩場に降り立つ。
「何処からでも良いぜ」
腕を組んで半身の姿勢のターレスは、余裕を滲ませながらにかかって来いと示唆する。
これが彼と自分の実力差なのだろうか。
いつか自分が逆に「何処からでも良いですよ」などと挑発的なことを言う日が来るのだろうか。
いけない……余計なことを考えては始められない。
は浅く二度三度と呼吸を繰り返し、ターレスと相対する。
いつもの通りに構え、勢いよく岩場を蹴った。舞空術は助走を要しない。
瞬発力と気のコントロールで勢いをつける。
その時に気付いたのだが、風に靡くスカートが何だか凄く頼りない。
普段から足を出しているから余り関係なさそうなものなのだが、纏わりついてはふわりと揺れる感覚はにとって全く慣れない未知の感覚だ。
違和感を覚えながらも余裕の笑みを浮かべているターレスに向かって思い切り腕を振りかぶる。
勿論、これが当たるはずが無かろうとも思っている。直線的になりがちな初撃は、ターレスに当たることが殆ど無いのが通常だった。大抵素早く避けられてしまう。
故には常に二撃目の算段をしなければならなかった。
殴りかかりながら、彼がどちらへ避けるのだろうかとそればかりを考えていた。
「やァっ!!」
打ち付ける瞬間、声と共に深く息を吐く。
普段通りの運びなら、手ごたえはなくは瞬間的にターレスの姿を追わねばならない筈だった。
しかし。
ぱぁんと小気味良い音とともに何かを捉えた感覚が腕を伝わってくる。
ターレスが、掌での拳を受けたのだった。
「っ、え……っ!?」
普段とは違う行動に一瞬が怯んだ隙に、ターレスはその拳をきゅっと握って捕まえる。
「どうした?まだ始まったばかりだぜ」
「きゃっ……!」
掴んだ手を引き寄せて、バランスを崩したところでもう一方の手首も捕まえる。
向かい合うように拘束されてしまったは、普段ならここで間髪入れず足蹴りで脇腹でも狙うところなのだが、スカートが捲り上がることに抵抗を感じて躊躇した。
いつもの戦闘服ならそんなこと感じる必要もないのに……。
やはりこの服は戦闘訓練に適してはいない……と、が心の中で舌打ちをした時である。
目の前のターレスがにやりと笑った。
それはもう、楽しそうに。
「蹴らないのか?今の俺は隙だらけだろ?」
「……」
「寧ろ、蹴ることが出来ないってのが正解かな?」
くっくっと喉で笑ったターレスが片足を持ち上げた。
逆に蹴り飛ばされるのかとは体を緊張させたが、ターレスはその足を後ろにふりかぶったりはしない。
ただ、ゆっくりと持ち上げたブーツの爪先でのスカートの裾を持ち上げたのである。
「やっ……!な、何するんですか!?」
「俺を蹴らなかったってことは、アレ、穿いたんだろ?」
ターレスの言葉はに衝撃を与えた。
質問の答えに心当たりがありすぎる。
何故それを、という気持ちとやはりターレスが、と言う気持ちが同時に湧いた。
「やっぱり、先生がこの洋服を用意したんじゃないですか……」
「いやァここ一番で驚いた顔が見たくてよォ。それに似合ってるって言葉は嘘じゃないぜ。ついでにこっちも拝ませてくれよ」
なあ?と、ターレスが更に爪先でスカートの裾を持ち上げる。
「あっ、あっ、やだ……止めて……」
「おいおい、今からそんな声出すなよ。勃っちまうだろ」
軽口に反論する余裕もなく、はターレスに掴まれた手を振り解こうと試みた。
その間にもスカートはゆっくり捲られていき、白い太股が露わになる。
「嫌、嫌……止めてくださいってば!」
「焦った顔も可愛いぜ。ほら、見えちまうぞ」
「やだ!見ないで、止めて!!」
強く掴まれた手は振りほどこうともびくともしない。
普段ならもう少し勝負になるはずなのに……と、思い至るは、今ここで初めて彼に手加減されていたことを知った。
愕然とするのスカートを、遂にターレスの爪先が捲りあげてしまう。
ニヤニヤしながらスカートの中を眺める視線から逃れたくても、ターレスを振り解けないは顔を背けることしか出来ない。
「なかなか絶景だな。思ったよりエロい」
普段の下穿きと違い、布地が少ないそれはぴっちりとの体に食い込むように張り付いている。
両サイドは紐を結んで留めてあるのだが、何だったら後ろも紐のような形状だった。
的には、後ろの部分が向かいに立つターレスには見えないことだけが幸いである。
「この下着も先生が用意したんですか?」
「まあな」
「信じらんない!!先生の変態っ!」
「何とでも言え。痛くも痒くもねえ。それにお前はこれからその変態に犯されんだよ。興奮するだろ?」
掴んだ手を改めて引き寄せて柔らかなの頬にそっと唇を触れされる。
犯すなどと言う割には優しく触れるから狡い。抵抗する気持ちが削がれてしまうではないか。
「全部先生の計画通りなんですか」
「いいや?別に俺は何も企んじゃいねぇさ。ただ、可愛がってる女のやらしい姿は男なら誰だって見たいもんなんだぜ。それを存分に味わおうとしたまでだ」
手から力を抜いて、大人しくなってしまったの腰を軽く抱き寄せる。
「可愛がってるなんて嘘ばっかりです。苛めているの間違いでしょう?」
「馬鹿だな。可愛がってなきゃ服なんか贈らねぇよ」
期待を仄めかす言葉には視線を泳がせる。
気紛れなくせに口だけは上手いから本当に狡い。
「出るか。ここじゃ実際にヤったことにはならねぇしな」
「一応……現実とは遜色ないらしいですけど、ここ……」
「それでも俺は生身のお前が良いんだよ」
躊躇いもなくそんなことを言い放つ。
嗚呼、なんて狡い。



自分で脱ぎます、とは言った。
折角貰った服を損ないたくないからだ。
まさかそんなことはしないとは思うが、焦れたターレスに破かれたら嫌だ。それに上手く力を加減出来ずにボタンを千切られても困る。
だってこれを着て帰らなければならないし、それ以上に初めて誰かから贈られたものでもあるのだから。
ぷつんぷつんとボタンを外しながら、そう言えば下着はいつものチューブトップじゃないんだったと思い至る。
じっと挙動を見つめるターレスの目が痛い。
「あ、あの……あっち向いてくれません?」
「何言ってんだ。どうせ見るだろ」
「だからって脱ぐところ凝視しなくても良いでしょう」
「お前が後ろを向いて脱げば良いんじゃないのか?」
「そっちの方が恥ずかしいから嫌です」
は服と一緒に贈られた下着のデザインを忘れてはいない。
あんな紐みたいな下穿き、生まれて初めて身に着けた。何処の惑星であんな猥褻な下着を手に入れたのだろう。
「あたし、サイヤ人でも辺境に送られた一人なんでターレス先生の常識は通じないんですよ。サイヤ人なら普通の下穿きなのかもしれませんけど、もうちょっと普段のデザインに似たもの無かったんですか」
「いや、サイヤ人もあんなの穿かねーよ。地球産だ、地球産」
「地球の!?地球人って皆こんな下穿き使ってるんですか!?」
地球人のタイムパトローラーならたくさんいる。それどころか同僚のトランクスは地球育ちだ。
地球人の先生も何人もいる。
つまり彼らは皆、こんな下着を使っているのか……。
「……今度から地球人の先生と組手する時は、足元への気弾攻撃控えようと思います」
「は?何で?」
「道着破っちゃったら大惨事じゃないですか」
お尻を覆わない下着を普段から使用している地球人の先生の下衣を破いてしまったら……想像するだに恐ろしい。
「良く分からねぇが、まあ良い。それより手が止まってるぜ」
先を促されてはとうとうブラウスのボタンを全て外してしまった。
ここまで来たら変に照れる方が恥ずかしいかと、勢い良くブラウスを脱いでしまう。
「前に見たきりだが、そういうのも悪くねぇな」
「あ、あんまりそういうこと言わないでください……」
普段と違う下着姿に強い羞恥心を感じ、さっさと脱いでしまおうと留め具に手を伸ばしたら、ターレスの手も伸びてきてそれを制した。
「そっちは脱ぐな。先に下を脱げ」
「え、でもどうせ脱ぎますよね……?」
「いいから早く下を脱げ」
「ええぇ……」
意味の分からない強い拘りを主張され、仕方なくはスカートを下ろす。
先程見られたばかりだが、お尻の割れ目に食い込む紐のような下穿きを見られるのが死ぬほど恥ずかしい。
すぐにでも脱いでしまおうと思っていたのに目論見が外れてしまった……。
「先生……ほんっと変態です……。遊んでいるならもう止めてください……」
体を丸めて視線から逃れようとするは、しかしそんな態度がターレスを喜ばせていると気付かない。
本能に爪を立てられたターレスはの体を抱き寄せる。
ターレスに比べれば随分と小さな体だ。腕の中に易々と収まってしまう。
「遊んでなんかねぇよ」
耳元に顔を近付けられて吹き込まれる囁きの甘い声色にぞくりとした。
の体を抱き寄せたターレスの手が、やんわりとお尻を掴む。
肌に直に触れる掌が熱い。
対して、素肌になった肩やお腹に触れるのは戦闘服の冷たい感触だ。その真下には鍛えられたターレスの肉体がある。
血の通った温かな皮膚、触れ合う熱が高まる抱擁。
の喉がごくりと鳴った。
昔から快楽には弱いのだ。
自由や享楽は目の眩むような甘い味がすることを知っている。
ターレスが肉体的な快楽を与えてくれると知ったの体は素直だった。
「せんせ……ねぇ、先生は脱がないの……」
ねっとりとした声色に含まれた性の色にターレスが気付かないはずがない。
しかしここ一番のを味わいたいが為に、ターレスは雄の本能を押し殺す。
「そんな誘い文句じゃなァ……。もうちょい色っぽいことは言えねえのか?」
「……経験ないから分かりません……。でも、シたくなって来たんです……。前みたいに気持ち良くしてください……」
見上げてくるの視線には発情の熱が確かに籠もっていた。
嗚呼、これを待っていたのだ。ターレスは満足げに目を細める。
これはターレスの勘だが、彼女には自分と同じ奔放な自由を求める性質が備わっていると思う。快楽を覚えた後の素直な言葉がの本質であろう。
下着の上から乳房を覆うように触れる。
「あ、……ん、ん……」
腕の中で身じろぐの体はサイヤ人の女の中でも小さい方だ。
そのように生きて来なかったのだから当然とも言える。
まだ途上の、脆くて柔らかな細い体を確かめるようにやんわりと撫でまわしていると。
「は、……ぁ、もっと……直接、触って欲しいです……」
焦れったくなったが、自ら下着をずり上げた。そしてターレスの手を掴んで胸の上に導く。
彼の手は大きくて暖かかった。
「そうそう、その調子だ。経験ないとか言う割には上手いぜ」
浅黒い肌のターレスが触れるとの肌の白さが際立って見えるようだ。
更にぷっくりと赤く膨らんだ乳首が艶めかしく誘っている。
人差し指と中指の間に挟んでやったらの細い腰が軽くしなった。
「あ、っ……!あぁぁ……」
強弱をつけて嬲ると耳触りの良い淡い喘ぎ声も漏れてくる。
「どうした?お前のお望みのものだ」
言いながらターレスはの胸にがぶりとかぶりついた。
瞬間、が息を飲む。
「っああぁぁ……、先……生ぇ……っ」
敏感に膨らんだ乳首を、ぬるっとした感触が触れた。
唾液に濡れた舌先で捏ねられているのだ。腰のあたりが切ないような気分になる。
「あ、っあ……、やぁ、吸っちゃ……」
ちゅっ、ちゅっ、と啄むように吸われると足まで震えてきてしまう。
だめだ。立っていられない。
急激に自立の力を失うを支えてやりながら、ターレスは言った。
「立っていられないなら俺の上に乗るか?」
返答など聞かなくても分かる質問だ。
何度も頷くににんまりとしたターレスはようやく戦闘服を脱ぎ捨てると、その場に座り込んで自らの足の上にの乗せた。
そのまま抱き寄せれば、さっきよりもぴったりと密着する体勢になる。
頬に触れるターレスの体に、微かなときめきを感じては目を細めた。
嗚呼、やはり肌と肌が触れ合うのは気持ちが良い。とくにターレスに抱き寄せられていると体が自然に興奮してくる。
「はぁ、先生……キス、キスして……」
興奮のままに求めると、ターレスは口では答えず、顎を掴んで強引に口付けた。
どちらからともなく舌先を擦り合わせてその味を確かめる。
「はっ、……せん、せ……ん、んっ……」
角度を変えては攻めてくるターレスの舌を、それでも何とか口に含んで一生懸命愛撫してみた。
するとターレスは腰を更に密着させるように抱きしめてくる。
腰を跨いだ体勢でそんな風にされると、の足の間には必然的に彼の硬くなった部分が触れてしまう訳で……。
「せ、先生……あの、硬いのが当ってるんですけど……」
「クク……当ててやってんだよ。俺のコレ、スキだろ?」
なあ?と反応を確かめるようにわざと腰を擦り付けたりする。意地の悪いことだ。
内股に食い込んだ下着は既にじっとり湿っており、元から然程の機能性を感じなかったが、今ではすっかり機能不全である。
「すっげぇな、濡れっ濡れ……ホントはこういうエロい格好が興奮するんじゃねえのか」
つるりとした手触りの布地の上をターレスの指先がゆっくりと辿り始めた。
「やっ、ああ、そんなところ……」
皮膚の薄い柔らかな部分をくすぐられているは、体を震わせながら深い息を吐いた。
「んンン……っ、はああ、あっ、はあっ……」
にゅるにゅるとターレスの指が割れ目の間をなぞっている。
弱い刺激だが、それでも刺激であることに違いない。なぞられると吐息と共に喘ぎ声が漏れてしまう。
「んっ、あっ、せんせ……」
「熱いな……ぬるぬるしてるぜ。堪らねえ」
じわりと布から滲み出した愛液がターレスの指先を濡らしている。
やんわりと指の腹でひっかくように感じやすい突起部のあたりに触れてやった。
布越しでも爪先が痺れるほど気持ち良い。思わずの腰が浮く。
「腰振ってんじゃねぇか……擦り付けやがって。……ここが好きなんだな?」
きゅむ、とターレスの指先に力が籠もる。
一番感じる突起が圧迫されて、は背中をしならせた。
「っは!や、あっ……そこダメ……っ」
「嘘吐け」
強すぎない程度に絶妙な力加減で、何度も圧迫を繰り返すターレス。
それは確かに気持ちが良いのだが、同時に焦れったくもあり。もっと強い刺激を求めてターレスの指に腰を押し付けてしまう。
「先生ぇえ……それ、もどかしいよォ……。この前みたいにシて……」
口をついて出てしまった、彼女の可愛いお強請りを見過ごしたりはしない。
そっと指先を下着の中に潜り込ませ、粘液に濡れた入り口をなぞった。
「力抜いとけよ。入れるぜ」
「……あっ、あぁ……」
ぬくぬく、とターレスの指先がの粘膜に飲み込まれていく。
すっかり蕩けたそこは、痛みを覚えさせることもなく受け入れた。
「はあ、あぁん……」
緩やかに出し入れをすると、甘い溜息を吐く。うっとりとした恍惚の表情が何ともいやらしい。
彼女は少し前まで男を知らなかったはずなのに。
「俺に抱かれてから今日までの間、自分でココ触ったか?」
「え……?あっ、そんなこと、しません……っ」
「なら、さぞかし持て余したろ?ココが寂しくて堪らなかったんじゃねぇか?」
殊更に体内を意識させるべく、膣壁を丁寧になぞる。
ざらりとした彼女の感触に、ターレス自身もこっそりと期待を膨らませながら。
「くぅ、ん……っ!そんなの、わかり、ませ、んン……っ」
「その割にナカは良さそうだぞ?」
愛液に濡れ、滑らかになる指通りに目を細める。体内で試すように指を曲げた。
「ああっ……!」
瞬間、の体は弾かれたように跳ねる。
ターレスの指を飲み込んでいる内側も、そぞろに震えた。
「はっ……はっ……せんせ、ぇ……っ。それ、ィあ、変な、感じが、ぅあ……っ」
居心地悪そうに内股でターレスの腰をきつく挟み込み、眉を寄せるの顔のそそることと言ったら。
波のように寄せる快感は腰に重くわだかまったままでをじわじわ苛んでいる。
自慰により発散されることもなく、与えられるセックスを中途半端に教えられた彼女の若い体は、無意識の内に欲求を募らせていたに違いない。
しかしにその自覚はないのである。
「気付いてねえみたいだけどよ、強請ってびくびくしてるぜ」
何を強請っているのかなど、口にしなくとも分かる。
そっと彼女の体内から指を引き抜いて、の下着を引き下ろした。
まだ全身像を堪能していない気もしたが、またその内宥めすかして穿かせればいい。
代わりに反るほど勃ちあがった自身のそれを押し当てた。
「あ……っ」
「ほら、入れてやるから見てろ」
宛てがわれたターレスの先端が、ぬぶりと自身にめり込むのをは見た。
指とは比べ物にならない圧迫感。
しかしその感覚は待ち望んでいたもので間違いない。
「ああ、っ……ターレス……先生、っ。ゆ、っくり……シて……っ」
指に比べて相当質量の増したそれが体内を広げていく感覚にぞわぞわする。
カタチがはっきりわかるほどの焦れったさが、の体をゆっくりとしかし確実に押し開いて行った。
「あぁぁぁ……、入ってる、ぅ……っ、おっきぃ……っ」
上に乗せられているせいで、自重が勝手にターレスを飲み込んでしまう。
前よりずっと気持ち良いような気がして、は俯いたまま肩を震わせた。
「はーっ……はーっ……」
熱を伴って結合している部分がじぃんと痺れる。
深々と飲み込んでしまった先端が、体の突き当たりの部分に触れているような気がしてほんの少しだけ怖かった。
「まだまだキツいな……。痛いか?」
「痛く、ない……。で、でも……深くて、ちょっと……怖い、です……」
「……そうか」
ターレスの肩に額を押し当て浅い呼吸を繰り返すの頬に唇で触れてみる。
それは様子を伺うような行為だった。
しかしの体は、そんな何気ない仕草にさえ反応を示してしまうのだ。
「あー……怖いっていう割にはナカすっげえのな」
断続的にきゅうと締まっては弛緩する、握り込むような動きがターレスの腰をぞわぞわとさせる。
「少しずつ動かすぞ……」
わざわざ声を掛けるのは優しさからなのだろうか。には判別がつかない。
しかし地べたに押し倒されないのは、恐らく背中を痛めないように気遣われているのだと思う。
を乗せたまま、器用に下から緩やかに突き上げてくるターレスの感覚に、小さく溜め息をこぼした。
「はっ……はっ……は、あっ……あぁぁん……、せんせぇ、あぁっ……」
先端で深いところを突かれると体がびくんと跳ねる。
「その調子だ……。俺も良くなってきた」
その言葉は本当なのだろうかと視線をもたげると、満足そうに目を細めるターレスと視線が交わった。
ニヤけた表情はいつもの通りだが、僅かに眉を寄せて少し困ったような表情をしている。
得も言われぬ愛しさのようなものがこみ上げてきたは、そのまま顔を近づけてターレスの唇にやんわりと吸い付いた。
「んっ、……せんせ、は、あ……んっんっ……、キス、気持ちい……っ」
ちゅっと触れたり、唇を舐めたり、ターレスに舌先を吸われたり……。
結合部を擦り合わせながら繰り返されるキスが段々と深くなっていく。
「っは、、上手いぜ……ちゃぁんと男の誘い方分かってるじゃねえか……っ」
足を抱えられ、更に行為が激しさを増していく。
ずっぷずっぷと突き立てられる楔は何度もの体の奥を叩き、比例して痛みではなく快感が生まれてくるのが不思議でならなかった。
「んうぅ……っ、せんせえ、せんせえ……っ、すごいよぉ……っ……!」
髪を乱しながらは掴んだターレスの肩に爪を立てる。
「はァ……のナカはサイコーだな……。この前みたいに俺のこと苛めてくれよ、な……っ!!」
「ひっ!?」
ニヤリ笑ったターレスが突然、ぎゅむっ!と、尻尾の根本を思い切り掴んできた。
性感帯を刺激され、の体内がきつく締まる。
「くっは……堪ンねぇえ……、あーそこそこ……っ、思い切り搾り取ってくれよな……!たっぷり注いでやっからよォ」
はあはあと荒い呼吸を耳元で繰り返すターレスが、またしても楔を深く突き立てる。
「んんんっ、ふかいのだめ……!あーっ、当たっちゃう、お腹勝手にきゅんきゅんしちゃうよお!」
「はっ、はっ……なぁ、今日はナカでも良いだろ……っ」
「えっ、で、でも……っ」
「良いじゃねぇか……俺の子孕んじまえよ……!大事に愛してやるぜ……」
愛してやる、その言葉を聞いた瞬間の体内が切なく震えあがった。
「ハハっ、何だよ……愛してやるって言われて喜んだか?思い切り締めやがって……」
「ちが、あっあっ、だって、あ、そんな素振り……っ、全然……っ」
「興味ねぇ女なんか抱くかよ……っ、それこそ面倒だろうが……」
ぶわ、との尻尾が思い切り毛羽立った。
どうしよう、喜んでいるのがばれてしまう。恥ずかしい。恥ずかしい……!
「クソ可愛い反応しやがる……っ。はしたねえぞ、尻尾こんなに逆立ててよォ」
毛羽立ちくねるの尻尾の先の方を、ターレスが柔く甘噛みした。
「そんなのだめ!イきそうだからっ、しっぽかまないでぇ……っ!!」
の下腹にわだかまる快感の波が膨らんでいる。その瞬間が近いことをターレスも知っていた。
びくびくと波打ち、狭くなる膣壁に苛まれながら腰つきを激しくする。
「あああ、腰にクるぜ……良すぎて保たねー、あァ、中で出すぞっ、……出る、出る……っ」
どぶっ!と体内で熱の塊のようなものが溢れかえる感覚に支配された瞬間。
「あぁぁぁっ……!!」
ぶるぶると爪先を震わせながらもまた絶頂に至っていた。
脈動する何かが体内で熱を吐き出し続けている。
それがターレスの精液であることをぼんやりと感じ取り、は目を細めた。
嗚呼、こんなことまで許してしまったのかと。
だけど不思議なことに、やはりターレスにならば嫌な気分にはならないのである。





母星が滅びる瞬間には立ち会わなかったけれど、他の惑星の最期は数え切れないほど見てきた。
その原因はいつだってターレス自身であった。
腕の中で大人しく抱かれているに視線を落とす。
彼女もまた、ターレスに手折られるまでは綻び始めた清らかな花であったのだ。他の種を知らず、散らされるまでの間はその美しさで周囲を魅了したであろう。
しかし根付いた神精樹が大地を枯らすように、ターレスによって手折られ、今こうして彼の腕の中でのみその花を咲かせている。
もう同胞を腕に抱く瞬間など訪れないだろう。皆、母性と共に宇宙空間に散ってしまった。
放浪癖によって難を逃れたターレスのように、生き残ってしまったこのを除いては。
故にターレスはに執着する。
神精樹の実のように、得難い宇宙の至宝として。きっとこの先、彼女程貴重な血はないはずだから。
ターレスは諦めないだろう。
自由な時間の中に生き、欲望と本能に忠実な彼ならば。
いずれはが甘い自由の味を覚え、やがて思想さえもターレスに染まると信じているから。
最後に彼女を抱いているのは自身の腕であると。